研究活動

研究活動

2015年度 グループ2ユニットA 第1回研究会

報告題目宗教集団における信仰継承について
開催日時2015年10月14日(水)9:45~12:00
場所龍谷大学大宮学舎清風館3階共同研究室1・2
報告者瀬優理(龍谷大学社会学部准教授)
参加者25人

【報告のポイント】

 猪瀬氏は,現代の宗教集団において信仰継承がどのような位置づけにあり,社会の変化に応じてその実態がいかに変容しつつあるのかについて,創価学会をおもな事例にして考察した。また,比較対象として浄土真宗本願寺派の現状についても触れながら,今後の教団における信仰継承のあり方をめぐって議論した。

【報告の概要】

 宗教集団において,信仰がいかに継承されていくのかは,非常に大きな問題である。どの教団もそれぞれ独自の「教え」を持っているが,それを伝え続けていくためには,「教え」を伝えるための手段を,急速な社会の変化に応じて変更していくことが求められる。そして,この「教え」の再生産の過程において重要な位置にあるのが,教団内での信仰継承のプロセスなのである。しかしながら,従来の研究では,教祖の継承問題に注目が集まりがちであり,一般の信者における信仰継承については,あまり検討されてこなかった。

 猪瀬氏は,著書『信仰はどのように継承されるか―創価学会にみる次世代育成』(2011年,北海道大学出版会)において,創価学会における信仰継承に関する実態調査に基づく研究成果を提示した。同書は,個人化・私事化が進展した現代社会においても,なお生まれ育った家の信仰からの影響は大きい,という前提から,創価学会における信仰継承の実情について,様々な観点から検証している。

 たとえば,教団が提示している信仰継承のモデルについては,創価学園の創設の前後で,当初は子どもも大人と同様に信仰を持ち宗教活動を行う主体とみなされていたのが,学園の創設以後には,「学会っ子」として池田大作会長に学ぶ人材として育つことが理想とされるようになった,という。また,信仰継承が生じやすい二世信者の条件については,アンケート調査の結果から,信仰活動から肯定的効果を得たという実感が強いほど信仰継承しやすいことや,親が強制的に信仰活動を押しつけようとすると,子供は教団活動から逆に離れやすくなること,などが明らかになった。

 実際の二世信者の信仰継承のあり方については,次のようなパターンがあることがわかった。第一に,「継続的な信仰継承」であり,自己の悩みを解決する,人生の指針を獲得する,あるいは同じ教団に所属する家族との関係を維持するという目的のため,信仰が継承されるパターンである。第二に,「離脱後の信仰継承」であり,いったん組織を離れた後に,改めて組織活動が大事であることに気づいたり,逆に,組織活動から距離を置き,本尊礼拝や唱題の実践を個人的に行い続けたりするパターンである。第三に,「信仰継承をしない場合」であり,教団の活動を一切しない,家族関係が壊れるため正式な脱会はしないが関わりは持たない,正式に脱会する,といったようなパターンである。

 教団組織からの二世信者に対する働きかけについては,創価学園と,教団の青年部に属する未来部の重要性が大きいことが明確になった。未来部は,1964年に高等部が設置されて以来,徐々に裾野を広げながら,教団の学生信徒たちを組織活動に導く役割を果たしてきた。また,同時並行で創価学園が開学され,1968年より,中高,大学,小学校など,続々と設立されていった。未来部は,同部に配属された担当者を通して,子どもたちに将来の学会員としてのモデルを提示する機能を持ってきた。だが,こうしたモデル提示機能は,学会員の働き方や,子どもの休日の過ごし方の変化により,現在では,従来のやり方ではうまく働かなくなってきており,改善のための新たな取り組みが模索されている。

 こうした新宗教の信仰継承についての研究を継続する一方で,猪瀬氏はまた,浄土真宗本願寺派の寺院の地域社会における役割についても,調査を進めている。寺院は,地域の人びとのつながりを形成・保持するソーシャルキャピタルを生み出す基盤として機能するのではないか,という観点がそこにはある。ただし現状では,地域住民の多くは寺院との距離が小さくないことが見えてきている。

 最後に猪瀬氏は,教団内の信仰継承を考える上では,教団の構成員の子どもを「内部の人」と見るのではなく,特定の団体に「新しくやってきた人」として接するという姿勢が大事なのであり,そうした新しい人たちが,すでにある社会にどうしたらスムーズに溶け込むことができるのか,という観点を持つことが必須なのではないか,と結論した。

【議論の概要】

 猪瀬氏の発表に対して,真言宗智山派智山教化センターのメンバーや,日蓮宗の僧侶らから,数多くの質問が寄せられ,活発な議論が行われた。片親だけが熱心な信者というパターンの信仰継承はどうなのか,という質問には,母親が熱心というパターンが圧倒的に多く,その場合,子どもも熱心な信者になるのが一般的で,逆に父親が熱心な場合は,家庭不和の原因になりやすい,と回答された。教団活動のなかで時代に合わなくなり実施されなくなったものは何か,という質問には,マス・ゲームや夜遅くまでの会合などが,それにあたると回答された。現在の人口減少社会では,外部への布教よりもむしろ内部の信仰相続に重きをおく傾向があるのではないか,という質問には,基本的にそういう方向性であり,たとえば創価ファミリー座談会などが積極的に行われていると回答された。

※共催:真言宗智山派智山教化センター

【文責】アジア仏教文化研究センター

DSC_4488.JPG

このページのトップへ戻る