研究活動

研究活動

2015年度 グループ2ユニットA 第1回国内ワークショップ

報告題目自死問題に向き合う仏教者の活動とその理念
開催日時2016年2月22日(月)14:00~17:00
場所龍谷大学大宮学舎清風館3階共同研究室301・302
参加者30人

【報告のポイント】

 浄土宗、曹洞宗、浄土真宗から、自死問題に向き合う研究者(僧侶)が招聘され、それぞれの活動とその根拠となる教義・理念について報告した。実践と教義・理念の関係について相互理解を深め、改めて問題点を確認する機会となった。

【報告の概要】

小川有閑(浄土宗総合研究所)「浄土宗・自死者追悼法要の事例から」

 平成20年12月1日に築地本願寺で開催された自死者追悼法要「いのちの日いのちの時間」に参加し、自死遺族の自死者への思いに触れ、また、120名超えの参列者により追悼法要へのニーズの高さを感じた。この超宗派の法要を経験してその良さを感じる一方で、単独宗派の法要の良さ(一貫した信仰世界、法要の完成度)も再認識し、お念仏をして阿弥陀如来にお救いいただくという浄土宗の法要を行うことを発案した。これはセルフケアの期待も多分に含まれるものであった。

 この事例に基づき、お念仏をすることにより亡き人が阿弥陀仏に救われ、極楽往生できるという「浄土宗僧侶の信仰」と自死遺族の自死者に関する不安、法要へのニーズとの結びつきを確認した。また、事前講習により、教義と法要の意義がしっかりとリンクし、実際に法要に出仕して遺族と接し、よりいっそう厳粛な気持ちで法要をつとめることで信仰が深まり、僧侶としての自覚が強まり、このような「信仰⇔行動」の相互作用が生じているように思われる。

宇野全智(曹洞宗総合研究センター)「宗教者による対人支援の現在」

 曹洞宗教団の「対人支援」への取り組みには自殺対策・自死遺族支援・被災地支援活動などがあり、傾聴活動に関する啓発とロールプレイを含んだ研修会(現職研修会・寺族研修会など)や、曹洞宗総合研究センター「こころの問題」研究プロジェクトが進められている。

 先ずは「対人支援」の意味と意義について、曹洞宗の教義に基づいて裏付けがなされた。曹洞宗は『修証義』の四大綱領に則り、禅戒一如、修証不二の妙諦を実践することを教義の大綱とする。これら「懺悔滅罪」「受戒入位」「発願利生」「行持報恩」の四つの中でも、「受戒入位」が軸となって「発心」の原動力としての受戒となる。そして、菩提心(おさとりを求める心)の行く先を案じ、菩薩行として「布施」「愛語」「利行」「同事」を修め、四摂法を通じて「ともに仏になる」という信仰へと向かっていくとする。

 また、東日本大震災の被災者に対する対応についての曹洞宗宗義会(第113回通常宗義会)の会議録が紹介された。寺院の役割とされるカウンセリングの在り方と、カウンセラーの養成に関する発言を受け、そもそも僧侶がこの活動に取り組む意義は一方方向の関係ではなく、この相談活動を通じて同悲同苦の立場に立ち、同事同行の極めて宗教的な立場で受けとめ、僧侶自身が宗教者として成長していくという双方向の関係を目指すものとし、カウンセラーとクライアントの関係性とは異なるという認識を明らかにした。

 曹洞宗の要である坐禅を通じ、今日において何を実現するかを考えることが大事であり、宗教者・仏教者であることの意味を明らかにする。

竹本了悟(浄土真宗本願寺派総合研究所)「浄土真宗の救済をモデルとした自死念慮者への支援方法」

 自死念慮者への支援における目標を考えた際、さまざまなことが想定できる。例えば、自死念慮がなくなる、生きたいと思うようになる、精神的に安定する、孤独感がなくなる、生きる意味を実感する、自己変革、自己成長、などの精神的な変化、医学的な治療、社会への適応など、具体的な効果を想定することが可能である。これらの中で、念仏者の担うことのできる役割は、機の深信に基づく自己認識を前提とするならば、きわめて限定的にならざるを得ない。具体的に提供できる支援内容は、孤独感を和らげる、安心を感じてもらう、程度であろう。

 浄土真宗の救済の構造において、与えられる利益を目標(要)と効果によって分けるならば、目標を現生正定聚、効果を無量の利益、具体的には現生十益とすることができる。これを模範として、対人支援の目標と効果を明確に分けて考えるならば、従来の対人支援においてさまざまに設定されていた役割の内、凡夫の身の丈にあった限定的なものを目標として定め、それ以外の役割を効果として提示することができる。

 実際の対人支援において担うべき役割を明確にすることは支援者、被支援者相互にとって非常に重要であり、本発表で示した目標と効果を分けて考える在り方は、浄土真宗の教義に合致した対人支援の方法論を模索する上での、一つの基盤を示すことになると考える。

【質疑応答の概要】

 「自死」の定義、自死を考える方の自己決定の意味、教義的必然性に基づいた活動と情にコミットした活動の比較などの参加者からの問いに対し、報告者それぞれが自身の立場より答え、相互理解を深めることができた。

※共催:教団附置研究所懇話会「自死問題研究部会」,浄土真宗本願寺派総合研究所

【文責】アジア仏教文化研究センター

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