研究活動

研究活動

2015年度 グループ2ユニットA 第5回研究会

報告題目東日本大震災における仏教の果たした役割と課題
開催日時2016年3月4日(金)9:30~12:00
場所龍谷大学大宮学舎清風館3階共同研究室301・302
報告者藤森雄介(淑徳大学人間環境学科教授)
参加者10人

【報告のポイント】

 日本仏教社会福祉学会は平成23年4月の理事・役員会において東日本大震災対応プロジェクト委員会の設置を決定し、藤森氏が委員長に就任した。平成24年に実施したアンケートに基づき、東日本大震災における仏教の果たした役割と課題を分析し、これから仏教界が推進すべき協働連携モデルを提案した。

【報告の概要】

 この委員会の目的を「まず被災地の記録をまとめていくこと、また、本学会ならではの仏教的視点を持った支援のあり方、寺院を拠点とした活動のあり方について検討していくこと」と定め、具体的な活動の検討を開始した。すると、戦後の大災害時における仏教の活動に関する記録が極めて乏しいこと、また、限られた記録や経験録等が十分に引き継がれていないこと等に気付く。そこで、以下の3種類のアンケートを公益財団法人全日本仏教会(以下、全日仏)、仏教NGOネットワークの協力のもとに実施し(調査結果は全日仏HPに公開)、明らかとなった課題と提案を挙げていく。

 ①『東日本大震災における日本仏教各宗派教団の取り組みに関するアンケート調査(宗派教団調査)』の結果より、宗派団体と直接支援団体はお互いが補完的な「タテ」の関係にあることを自覚し、それぞれの役割に応じた支援活動に徹していく仕組み(つまりアドリブ対応が可能な、活きた「マニュアル」)を作っていく必要性を示す。

 ②『被災地寺院の教訓を今後の寺院防災に活かす聞き取り票(被災地寺院調査)』の結果より、寺院は日常からその避難所としての機能を意識し、主体的に「その時」のための備えを心がけておく必要があり、宗派教団を超えた「地域毎」の寺院の連携強化の重要性に注目した。また、公的機関側も仏教側も「政教分離」を建前に消極的な姿勢に留まってしまう場面が多かったが、震災を両者の認識に変化がみられた好機とも捉えている。

 ③『平成23年3月11日東日本大震災における仏教系各種団体の震災支援に関するアンケート調査(直接支援団体調査)』の結果より、支援活動を行う人材・資金の不足やノウハウの不備が挙げられ、上部団体等のバックアップ不足に関しては宗派教団調査結果からも同様の課題が指摘されている。

 今回の調査結果から「普段から情報共有のできるレベルのネットワーク化」が、早急に解決改善すべき共通の課題として認識された。仏教界はそれぞれの宗派教団や団体レベルにおいてはネットワーク化をはかっていたが、実際には十分機能しなかったようである。そこで、「仏教」をキーワードにこれまでの宗派や単一団体を超え、緩くてよいのでより外部へも広く持続可能で、かつ接続可能な「情報共有の場」の構築が必要とされることより、「仏教プラットフォーム」を提案する。「仏教」という「レール(鉄道=理念)」を走行可能な様々な「車両(宗派団体、直接支援団体、一寺院、個人)」が相互に乗り入れ、「情報」という積み荷を降ろしたり、積み直したりできる「フォーム(双方向な情報共有が可能な場)」を作りたいと考えるのである。

 淑徳大学の「アジアのソーシャルワークにおける仏教の可能性に関する総合的研究」というプロジェクトが、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業として採択された。そのなかのテーマの1つに「日本の地域社会におけるソーシャルワークと仏教の教導連携モデルの開発」があり、その内容として「仏教プラットフォーム」構築や関連研究が位置づけられ、今後の進展が待たれる。

【議論の概要】

 報告内容の他に仏教、仏教者の社会との関わり等についても議論された。災害時に寺院を避難所として活用することについて、寺院は公共物ではないという言い分もあり、解放することに違和感があるという意見より、その公益性と公共性の違いが取り上げられた。また、仏教者が敬意を持たれて日常に受け容れられる在り方がアジア諸国の仏教国にはあり、社会のなかにおける在り方も改めて考える必要性が訴えられた。

【文責】アジア仏教文化研究センター

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