研究活動

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2016年度 グループ1ユニットA 第1回学術講演会

報告題目慈恵大師良源から恵心僧都源信への影響 ―『往生要集』を中心に―
開催日時2016年5月17日(火)15:00~16:30
場所龍谷大学大宮学舎清和館3階
報告者武 覚超(叡山学院教授)
参加者69名

【報告のポイント】

 恵心僧都源信(942~1017)撰『往生要集』3巻は叡山浄土教大成の名著として知られているが、伝教大師最澄(766~822)に始まる「止観念仏」や慈覚大師円仁(794~864)による「五会念仏」の伝承を基調としながら集大成されたと考えられる。一方、叡山浄土教における最初の書とされる慈恵大師良源(912~985)撰『極楽浄土九品往生義』1巻に関しては、従来の研究において『往生要集』との関連については否定的な見解がとられている。

 今回は『往生要集』成立の基盤となった「止観念仏」と「五会念仏」について再確認したうえで、良源から源信への影響について『九品往生義』と『往生要集』との関連を中心に検討を加えた。

【報告の概要】

 『九品往生義』と『往生要集』に関する従来の学説のなか、石田瑞麿校注『源信』(日本思想大系6、1970年、岩波書店発行)の解説「源信と先行の念仏思想との関係」や、平林盛得著『良源』(人物叢書173、1976年、吉川弘文館発行)を取り上げ、両氏同様にこれらの関連を全面的に否定したうえで、『九品往生義』の偽撰的立場にまで言及のあることを指摘する。また、最近の井深観円「『九品往生義』についての研究動向」(『天台学報』42号、2000年発行)においても、これらの関連についてはほとんど省みられていない現状を指摘する。

 そこで、師僧良源と弟子源信の間には、伝記上において密接な関係があるのみならず、『往生要集』には『九品往生義』の直接的な教理の依用や影響が顕著にみられることを、具体的な典拠を挙げながら検討を進めていく。

 1つは「臨終十念」について新羅義寂の説を取り入れて『弥勒所問経』の十念説を依用したことである。もう1つは「臨終に心力」について天台の指南書とされる『大智度論』、および天台大師の『浄土十疑論』の所説によって「臨終の一念は百年の業に勝る」と主張し、『観無量寿経』に説く下品下生人の念仏往生を経証としていることである。これら2点をもって、『九品往生義』から『往生要集』への直接的な影響があることを明らかにする。

 以上のことより、『九品往生義』と『往生要集』との関連性を否定する石田瑞麿・平林盛得両氏の学説は、全く根拠のないものであり、今後は改めなければならないとする。なお、『九品往生義』は『観無量寿経』九品段の解釈であり、大文第四正修念仏を中核として、浄土念仏の要文を集大成した『往生要集』とは、撰述の趣旨が異なる点にも留意しなければならないが、『往生要集』によって確立・大成された叡山浄土教の基調は最澄伝承の「止観念仏」、および円仁伝承の「五会念仏」にあることを再確認しておかなければならないとし、今回の講演を締め括られた。

【議論の概要】

 良源と源信との人間関係についての問いに対し、名誉・名利を求めない源信の生き様とは相容れないものがあったかもしれないが、教義面等の様々な面において何かしら通じるものはあったのではないかといDSC_6328.JPGう推察をもって答えとした。

【文責】アジア仏教文化研究センター

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