研究活動

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2016年度 グループ1ユニットA 第3回学術講演会

報告題目本学所蔵古地図のデジタル修復(混一彊理歴代国都之図の保存のためのデジタル修復・複製)
開催日時2016年6月22日(水)16:30~18:00
場所龍谷大学大宮学舎西黌2階大会議室
報告者岡田至弘(龍谷大学理工学部情報メディア学科教授)
コメンテーター村岡 倫(龍谷大学文学部教授)
参加者31人

【報告のポイント】

 画像解析、画像処理を専門とする岡田氏より、単に予算と最新機器を揃えてのデジタルアーカイブとは異なる視点をもって、本学所蔵古地図のデジタル修復の最新状況が報告された。

【報告の概要】

 本学所蔵の『混一彊理歴代国都之図』(以下、『混一図』)には「1402年」という紀年がある。しかし、最近の調査結果に基づけば、実際の成立年時は1480~1490年代とされ、このことより原本が存在し、本学所蔵の『混一図』は複本と考えることができるが、今のところはそのなかでも最古のものとは目されている。

 本学は『混一図』以外の古地図も所蔵しており、深草学舎の貴重書庫には世界地図「Geographia/Mela」(1482年/ベニス出版)がある。グーテンベルクの活版印刷による非常に古い地図であり、この時期成立のヨーロッパ系地図特有の特徴を持っている。注目されるのはこの「1482年」という成立の年紀であり、当時既にこの程度の地図を作製する技術があったことを示す。

 このような地図は他にも現存し、最近では1962年に米国イエール大学に寄贈された、マルテルスの世界地図のデジタル修復が、地理学者達によって進められている。この修復・復元においては12色分解をおこなうマルチスペクタクルバンドカメラを用い、色彩画像処理と地名判別処理がなされ、続々と調査報告がなされている。この地図は1490年頃の成立と見なされており、この『混一図』と同時代の成立であることより、比較しながら慎重な調査が試みられている。

 現在、本学所蔵の『混一図』は経年変化による劣化や、表装による絹糸の変形などにより、色彩情報の欠落、文字ストロークの変形など多くの情報が失われつつある。これまで、超高精細画像を用い、色彩画像処理および形態学的画像処理により、これらの劣化・欠落状況を解析するとともに、蛍光X線元素分析による顔料推定と、色彩画像処理との連携や、絹本の織構造解析による変形解析を行い、これらの解析結果から原図の復元をデジタル情報として生成するとともに、絵絹布への色彩復元と墨色復元が試みられた。

 この原図は縦1,387mm×横1,605mm、1402年に作成されたという紀年はあるが、伝来および修復歴については龍谷大学への収蔵以降1985年の装潢修理の記録が残るのみである。1985年の修理では、表装・裏打、軸木などの更新がなされ現在に至る。

 また、この原図は516mm、566mm、543mmに折り目を持つ絹本からなり、ここから製作時点において左右若干の幅の絹布が欠落しているものと考えられる。この絹布は60~160µの絹糸の平織りの構造を持ち、経年変化と軸装による荷重により文字領域、とりわけ文字ストローク部や輪郭部において変形し、判読性の低下を招いている。

 暗色領域は河川を示しているが、水域は海(塩水):青、湖・川(淡水):青もしくは薄い青、黄河:黄色、というように描き分けられていることが、僅かに残る彩色部から推定される。同様に国都や都市名は墨色と赤色、島嶼部は白色、山脈は墨色と色によって描き分けられている。中央の都市名を囲む赤色領域は、蛍光X線分析によりHgを主成分とする(他Pb)水銀朱が確認される。水域(海)についても青色顔料が確認されるが、微量のCu、Feが検出されるだけで、顔料を特定するには至らなかった。

 描かれている細線や最小文字ストローク幅は80~100µ(0.08mm~0.1mm)と細密であり、ここから本図の現状を記録する必要解像度は、mm当たり12本以上であり、このため(1,605mm×12)×(1,387mm×12)=約3.5億画素以上のデジタル記録、色彩度:青および無彩色を優先し、RGB各14ビット諧調とした。2014年には同一解像度で赤外域画像(850nm)および、青および紫色画像(360nm)の撮影を行い、同一諧調のデータとして過去撮像されたフィルムおよびデジタル画像との比較検討を進め、墨色だけではなく多様な顔料による色彩情報の復元および複製化に資するデータ解析を進めた。また、1985年以前の表装を解析し、摺箔もしくは印金技法による表装裂と推察され、同技法の解析のための3次元計測によって箔金属痕跡を示す画像が示される。

 現状では超高精細画像の作成と顔料特定のための元素分析、およびデジタル顕微鏡による撮影と部分3次元画像復元を行い、今後必要となる基本的なデータ取得を行っている。今後はマルチスペクタクルバンドカメラ等の画像入力の多様化への対応と同時に、デジタル復元された画像の容易なハンドリング(Viewer)の検討、研究対象になりうる複製図の開発の必要性、そして、ここから同種の古地図に対しても本手法が有効であることの提示をもって報告が締め括られた。

【議論の概要】

 スペクタクルバンドカメラによる解析について、その対象が絵画と地図の場合では一様ではなく、地図に特化した方法・機材を開発する必要があるとし、諸々の事例に基づきながら今後の発展性について説明がなされた。

【文責】アジア仏教文化研究センター

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