研究活動

研究活動

2016年度 グループ1ユニットA 第1回国内シンポジウム

報告題目南都学・北嶺学の構築に向けて―論義と儀礼―
開催日時2016年 6月 3日(金)13:15~16:30
場所龍谷大学大宮学舎清和館3階ホール
ファシリテーター道元徹心(龍谷大学理工学部教授)
参加者189人

【報告者・報告題目 】

第1部 基調講演

上島 享(京都大学大学院文学研究科・文学部教授)
「古代・中世における論義法会の歴史変遷とその意義―朝廷と南都・北嶺の論義法会―」

第2部 講演・討議

藤平寛田(天台宗典編纂所編輯長、叡山学院講師)
「天台の論義」

蜷川祥美(岐阜聖徳学園大学短期大学部教授)
「法相の論義」

【報告のポイント】

 南都学・北嶺学の構築に向け、歴史研究者と教学研究者によって論義・儀礼を中心に議論が交わされた。

【報告の概要】

上島 享「古代・中世における論義法会の歴史変遷とその意義―朝廷と南都・北嶺の論義法会―」

 諸宗間の論争が活発化する奈良末・平安初期には、論義をともなう法会が盛んになる。また、奈良末期より学僧の著述形式にも変化がみられ、経論の本文に逐一注釈を加えるものの他に問答体の叙述が現れ、好んで用いられるようになった。そもそも、論義や問答体の著述は既に中国で見られるものであるが、日本において両者が明確な形で姿を現すのが、諸宗間の対立・論争が展開した奈良末期である点が重要である。学僧らは机上の思索では問答体という著述を、公の場では論義という法会形式を利用することで、他宗・他説を批判して自らの教相判釈を鍛えたのであり、両者は密接に関連して発展していった。
 教学研究の高揚という時代的な状況のもとで研鑽を積んだ最澄・空海は、天台・真言宗の成立を含め、仏教史上では奈良末期・平安初期をひとつの時代とみなければならない。また、五階・三会の成立につながる桓武朝における経論の解義を重視する政策も、奈良末期の教学研究の進展を踏まえたものであったことに注目される。
 日本の古代・中世期(鎌倉初期まで)における仏教教学の歴史的変遷についての総論を通し、論義法会の位置づけや意義を確認すると共に、いかなる社会状況の下で個々の法会が開催されたかを考察するという歴史学的な手法が用いられた。つまり、論義法会そのものも時代的・社会的状況のなかで変化するものととらえ、当該期の仏教史全体の中に果たした役割や歴史的意義の解明が可能となるとした。また、これまであまり検討されてこなかった、顕教の論義が密教に与えた影響など新たな事実を提示することも可能となるとし、この他、いくつかの課題が歴史研究者の側から教学研究者へと投げかけられた。

藤平寛田「天台の論義」

 天台論義とは比叡山延暦寺において四年に一度、法華大会に行われる広学堅義が最も知られた行事である。天台論義書を分類整理する場合、「顕教論義書」、「密教論義書」、「円戒論義書」、「法会記録類書」の四部門に大別することができる。この論義を理解する上では、「法華十講」や「法華八講」における『法華経』を中心とした論題が重要であり、これらにおいて精査されてきた天台における『法華経』論義の教理や思想が解明されるものと考えられ、諸文献のなかでも『法華十軸鈔』は鎌倉・室町期の基本文献と言われている。
 今後の天台論義研究においては、論題に取り上げられる問題を個別に研究する方向と、論義書そのものを研究する方向とがあり、両者共に未翻刻文献が多数存在していることからも、基礎的研究調査が必須とされる。直接文献資料に向かい合うことによってしか十分な成果を期待できない現状である。

蜷川祥美「法相論義に見る仏道論の変遷」

 法相宗の教学研鑽は『成唯識論』の本文について問答形式で行う論義研究が主流であり、そうした一つ一つの論義について記録を残した「短釈」と呼ばれる書が三千余り残されている。
 「仏道」に直結する重要テーマである「約入仏法」は「信」が「仏法に入る初首」とし、法相教学における位置づけを問う論義である。それは信のはたらきを資糧位以降の菩薩を中心とした解釈から、仏教徒すべてにひろげようとした蔵俊の論義などから始まったが、後世の多くの法相宗の学僧たちの論義や談義により、様々な異説を生み出しながら教学の奥行きを深めるものとなったことが明らかとなった。
 蔵俊、貞慶、良算を中心として多数の論義抄が成立し、自由闊達な論義研究が進められたなか、平安末期より鎌倉時代を経て室町期に至るまで、あくまで大乗菩薩道を歩むという学侶たちの仏道観に基づき、日本法相宗の論義・談義の研鑽は大きな発展を遂げたのである。

【討議の概要】

 「応和の宗論(教学論争)」等について議論が交わされ、今後の研究に期待が集まる。

【文責】アジア仏教文化研究センター

DSC_6705.JPGDSC_6697.JPG

このページのトップへ戻る