研究活動

研究活動

2016年度 グループ2ユニットA 第1回ワークショップ

報告題目過疎地域における寺院の役割-宗勢基本調査結果が示すこと-
開催日時2016年10月4日(火)10:45~12:15
場所龍谷大学大宮学舎清風館B103
報告者西光義秀(第10回宗勢基本調査実施センター調査研究員、宇陀市万行寺住職)
コメンテーター長上深雪(龍谷大学社会学部教授)
参加者18名

【報告のポイント】

 最新の「宗勢基本調査」の結果を分析しつつ、今日、地域に求められる寺院、住職の役割と、寺院、住職の側から積極的に行うべき社会活動について様々な提言がなされ、改めて寺院の有する社会性・公益性を見直す契機となった。

【報告の概要】

 「宗勢基本調査」とは1959(昭和34)年から実施される、浄土真宗本願寺派(以下、本派と略称)の寺院の現状を把握するための調査である。この調査に関わる条例には、「宗門全体の動勢を捉え、宗門に包括される一般寺院及び非法人寺院の現況を統計的に調査し、調査時点における宗門の実態が、宗務全般に十全に反映されるよう分析し、宗門の抱える諸課題への適切な対応解決を図るための基礎資料を得ることを目的とする」(平成27宗達第1号第10回宗勢基本調査実施条例第1条第2項)とあり、その目的を明確に知ることができる。

 1976(昭和51)年の第4回までは全国の一般寺院に対し、居住人数、寺院教化団体の有無や種類等の基本的な事項を問う簡単なものであった。昭和30、40年代の高度経済成長期であり、各回の調査結果には大きな変化は見られなかった。しかし、1983(昭和58)年の第5回の調査においては、本派の全寺院から5分の1抽出し、住職と門徒代表それぞれ1名に実態および意識を問い、この第5回だけは「宗勢実態基本調査」と呼ばれている。この回は社会心理学が専門の金児曉嗣氏(現在は相愛大学学長)が参加し、社会心理学の質問項目が多く盛り込まれ、住職と門徒の間には大きな乖離があるという結果が出た。このことよりいくつかの問題が明らかになるも、対応・解決策は特に打ち出されることはなかったが、2003(平成15)年の第8回の調査頃より、内部からも「調査のための調査で終わらせてはならない」という意識が高まり、調査が目的とする宗門の諸問題解決のための基礎資料を得るため、粛々と調査が続けられてきた。

 この度の第10回目の調査においては、配布・回収ともに郵送法が用いられ、母集団は本派の一般寺院および非法人寺院であり、10,207ヵ寺に発送して18ヵ寺は不着であった。調査対象を各寺院の住職とし、①「寺院の基礎情報」、②「寺院活動について」、③「寺院基盤について」、④「宗門の取り組み」のこれら4項89問からなる質問が設けられた。調査基準日は2015(平成27)年3月実施とし、返信6,952通、回収率68.1%であった。今回の調査の集計結果をもって、本派の全32教区において報告会が開催されたが、これは過去10回の調査では初めての取り組みである。そして、最終報告書が今年度中にはまとめられる予定である。

 日本全国の農山漁村地域、住宅地、市街地のなか、本派の寺院の半数以上は農山漁村地域に立地しており、今も昔も変わらずその地域を基盤としている。その地域のなかでも寺院が多い地としては山陰、滋賀、奈良、国府等の教区が挙げられる。しかし、現在これらの教区は過疎問題に直面している地域が多くある。

 浄土真宗の寺院の主となる活動としては報恩講、永代経、春・秋の彼岸等の法要や、門信徒の通夜・葬儀や年忌の法事が挙げられる。また、仏教婦人会、仏教壮年会、日曜学校等の教化団体を通しての様々な活動や、文書掲示や法座活動等の伝道教化活動もあり、寺院ごとに特色が見られる。そして、今日ではこれらの活動に加え、本堂の貸し出し、悩み相談、地域奉仕活動、コーラス、お茶・お華・習字教室、避難所としての備えといった、寺院活動とは直接的に結びつかないような地域社会に開かれた活動を、どれだけやっていけるかということが重要になってくると、この度の調査結果をうけて西光氏は強調する。

 これらの活動のなか、避難所としての備えに関しては、地震や津波の大きな被害が予想される地域においては、実施する寺院の多さが今回は特に目立った。また、諸々の地域奉仕活動については前に挙げた教区のなか、特に山陰教区が高い数字を示しており、その解答によれば、地域の自治会や婦人会の役員、学校のPTAや保護者会の役員、社会福祉協議会の役員、民生委員や児童委員を務めている住職が多く、地域の中に積極的に関わり、中心的な役割を果たしていることがわかる。

 前の避難所としての備えや山陰教区の住職の活動を通してうかがえば、過疎・過密地域に限らず、地域社会において寺院が果たしていくべき役割が明らかとなってくる。住職は寺院から動かず、門信徒が寺院へ参拝してくるという関係は既に昔のものである。これからは、地域において必要とされる活動やサービスを見極め、提供していく力が求められ、住職の側からは寺院の可能性を常に積極的に発信していくことが必要である。公益法人としての宗教法人、寺院、住職という視点を持ち、これらが有する社会性・公益性というものを意識した活動を展開していくべきであると、今後の寺院の在り方を明確に示した。

【議論の概要】

 前回と今回の調査結果における大きな相異点について問われると、篤信な地域とされた教区であっても地域社会全体の力が落ちてきていることを指摘し、高齢化や人口の都市部集中等が原因であると分析する。また、過疎問題に対してはその地域の寺院を支援するNPO法人の設立や、支援ネットワークの仕組の確立等の具体策を挙げ、それぞれに今後の課題を投げかけた。

【文責】アジア仏教文化研究センター

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