研究活動

研究活動

2016年度 グループ1ユニットB 第2回ワークショップ

報告題目近現代の宗教界と公益法人制度―仏教婦人会の法人化を中心に―
開催日時2016年11月4日(金)16:00~18:00
場所龍谷大学大宮学舎西黌2階大会議室
報告者大澤広嗣(文化庁部宗務課専門職)
参加者19人

■共催:龍谷大学仏教文化研究所

【報告のポイント】

 近現代の日本の宗教界において,公益法人制度という「見えない」システムが,宗教団体による「見える」活動をいかに左右してきたのだろうか。仏教婦人会を例にして,その実態を検証する。

【報告の概要】

 はじめに大澤氏は,既存の宗教(史)研究においては,宗教界と公益法人制度史を俯瞰した研究が皆無であることを指摘した。そして,その空白を埋めるための取り組みの一環として,今回は「仏教婦人会」を事例にしながら,近現代の宗教界と法人制度をめぐる研究報告を行うと述べた。

 次いで氏は,現行の宗教法人制度の概要を示した後,明治以降の宗教団体をめぐる法人制度の変遷について,その要点を整理した。「民法」(明治29年法律第89号)では,宗教活動を目的とする法人の設立は認められていなかった。財産の集合体である寺院が,事実上の法人として扱われてはいたが,法的根拠はなかった。

 時代は下り「宗教団体法」(昭和14年法律第77号)において,寺院が明確に法人として規定され,それ以外の宗教団体の法人化が可能になった。ただし,この法律により法人になった教派・宗派・教団は,日蓮宗や日本基督教団などわずかに留まった。敗戦直後の「宗教法人令」(昭和20年勅令第719号)では,届け出だけで宗教法人が設立できるようになったが,数年後の「宗教法人法」(昭和26年法律第126号)では,行政が法律の要件に合致していることを確認の上,法人資格が与えられるようになった。

 一方,民法の旧第34条により社団法人や財団法人の設立は認められており,これを受け仏教界では,宗教活動を主たる目的としない,奨学援助,仏堂・廟所の宝物維持,青年会運動,社会教化などを行う諸法人を設立していった。仏教婦人会もまた,この脈絡での法人化が進められた。

 戦前から財団法人となった例としては,日清戦争下での後方支援などを目的に設立された播磨仏教婦人報国会(明治42年),真宗教義の宣布や慈善事業の推進などを目的に設立された真宗大谷派婦人法話会財団(大正13年,戦後に「大谷婦人会財団」に改称),同様の目的から設立された真宗大谷派大阪婦人法話会(昭和10年)などがある。

 また,大正14年に結成された曹洞宗尼僧団を母体として,昭和26年に法人格のない任意団体として設立された全日本仏教尼僧法団は,やがて社会教化の推進のために法人化を目指すようになった。そして,昭和36年に財団法人としての設立許可を受け,さらに平成25年に公益財団法人に移行した。あるいは,全日本仏教婦人連盟は,全日本仏教会による全一仏教運動の一環として,昭和29年にやはり任意団体から出発し,各宗派の婦人会の結集を目指した。そして,昭和42年に社団法人としての設立許可を受け,さらに平成25年に公益社団法人に移行した。

 こうして少しずつ法人化を遂げてきた仏教婦人会については,キリスト教の女性関係団体との比較において,その特徴の理解がより深まる。キリスト教界では,比較的早い時期から教会を維持するための財団が多数設立されていたため,財団設立の事務処理能力を有しており,それゆえ,戦前から女子青年会などの法人化が各地で盛んに進められていたのである。

 以上のように,明治から現在に至るまで,仏教婦人会などの宗教関連団体は,自らの事業を拡大すべく,民法に基づく財団・社団法人の設立に取り組み,活動を支える法的・財務的基盤を形成してきた。また,法人化による社会的な信頼性の上昇と,それにともなう寄附金の集めやすさも,法人化の利点としては大きかった。こうした宗教団体の活動をめぐる国家的な制度や,法的な権利関係の問題について,研究者はこれまでほとんど注目してこなかったが,近現代の宗教の変遷を考える上では,決して見逃してはならない点であると,氏は最後に指摘した。

【議論の概要】

 大澤氏の報告に対し,会場から様々な質問やコメントが寄せられた。今回の報告では仏教婦人会の設立目的などの確認が中心で,婦人会の実際の活動やその歴史的意義などが見えてこないというコメントに対しては,仏教婦人会の研究自体がまだ不足している状況であり,それを今後は共同研究により進めていくことが確認された。また,宗教団体法において歴史上はじめて宗教団体の「法人」の規定がなされたことの意義に関する質問に対しては,それ以前の法律における「社団」「財団」という規定では,寺院による宗教活動の実態に対応しておらず,宗教団体法はそこからより実態に即した「法人」の規定を設けたところに,歴史的な画期性があったと述べられた。さらに,公益法人の「公益(性)」の定義に関する質問に対しては,法令上,公益性の明確な根拠は示されておらず,というのも,これを定めてしまうと団体ごとに「公益性」のレベルに差が生じてしまうという問題があり,したがって,これは単に税制上の扱いとして規定されていると回答された。

【文責】アジア仏教文化研究センター

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