研究活動

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2016年度 グループ1ユニットB 第6回研究会

報告題目戦時下における日本仏教の国際化―アメリカ強制収容所での真宗伝道―
開催日時2016年12月8日(木)17:00~18:30
場所龍谷大学大宮学舎清和館3階会議室
報告者釋氏真澄(2016年度BARC公募研究員)
参加者8人

【報告の概要】

 2016年度の公募研究成果の中間報告として,釋氏公募研究員が,太平洋戦争中のアメリカ強制収容所における真宗伝道の実態とその意義に関する報告を行った。

 1941年12月の真珠湾攻撃の後,アメリカ西海岸とハワイの一部地域に住んでいた約12万人の日系アメリカ人の大半が,10ヶ所の強制収容所(キャンプ)に収容されることとなった。敵国である日本との結びつきのあった仏教界は,各種の迫害を受けたが,しかし,キャンプ内では宗教活動が許容されており,本願寺派による伝道活動も行われていた。その実態については,ロサンゼルスの全米日系人博物館が所蔵している数多くの資料や,米国仏教団(Buddhist Churches of America)の出版物などから明らかにすることができる。

 真珠湾攻撃の翌月,サンフランシスコの米国仏教団本部において,カリフォルニア仏青連盟緊急会議が開催された。欧州系の得度者であるジュリアス・ゴールドウォーターらが中心となったこの会議では,今後,仏教の「アメリカ化」が不可欠であることが確認され,教団組織の超宗派化,教学の通仏教化,儀礼の形式をプロテスタントのそれに近づけることなどが議論された。また,この会議に前後して,教団本部から各地の仏教会宛で,信徒指導にかかわる通達が複数回にわたって出されており,そこでは,米国政府の指示を厳守する一方で,仏教の精神は忘れてはならないことや,日系一世と二世の間の対立関係を解消して,日系人が一致団結すべきことなどが強調されていた。

 こうした「アメリカ化」の推進は,キャンプ内でよりいっそう顕著になっていった。教団が危険思想を持っていないことを証明するため,「親鸞」等の宗派的な用語を使うことを抑制し,「仏教」「大乗仏教」といった日本限定的でない言葉遣いが重んじられた。他方で,キリスト教伝道への対抗と,そこからの影響の両面から,キャンプ内では日英の両語を用いた日曜礼拝や法話会が積極的に行われた。現場の開教使から送られた書簡にも,当事者たちの仏教や信仰に対する強い思いが記されている。戦時下の危機的な状況において,なおも熱心に行われた一連の伝道活動の意義は大きく,戦後アメリカでの日本仏教の展開についても,この時代の経験がもたらした影響は少なくない。

 伝道で語られた法話の内容を見てみると,通仏教的な倫理性を説くものと,真宗の内容に傾斜した救いを説くものが中心であり,そこに御同朋の教え(収容所内での日系人の団結を導く)や,愛国心の強調が加わり,それらの背景には「Carry on, Bussei!」というスローガンのもとにある仏法の継承というテーマが存在している。ただし,二世の人々が次々と徴兵され,戦死していくなか,救いに関する説教が重視されてくる傾向が認められた。

 以上の報告に対し,「アメリカ化」によって進められた通仏教的な説法スタイルは,何を典拠としており,また戦後もこのスタイルは継続されたのかについて質問があった。これに対し釋氏公募研究員は,アメリカにはダンマパタの英訳など,初期仏教の経典が大乗仏教より先に移入しており,またポール・ケーラスの『The Gospel of Buddha』なども広く読まれており,開教使たちもこれらのテキストを活用していたと述べた。また,戦後になってからも,通仏教的な説法から入り,次第に真宗の教えに移行していくというスタイルが続き,二世以降のアメリカ仏教の英語教学は,基本的に通仏教(釈尊の仏教)と真宗教学の並存が特徴であると論じた。

以上

【文責】アジア仏教文化研究センター

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