研究活動

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2016年度 グループ1ユニットA 第10回学術講演会

報告題目『混一疆理歴代国都之図』研究から見た仏教系世界図検討の課題
開催日時2017年1月26日(木)16:45~18:15
場所龍谷大学大宮学舎西黌2階大会議室
報告者濱下武志(東洋文庫研究員)
ファシリテーター渡邊 久(龍谷大学文学部教授)
コメンテーター村岡 倫(龍谷大学文学部教授)
参加者15人

【報告のポイント】

 『混一彊理歴代国都之図』(以下、『混一図』)研究において、特に海洋・海域に関する着目することにより、陸地図としてだけの位置づけから海洋図としての意義が見出され、そこから新たな知見が導かれていく。

【報告の概要】

 これまで、『混一図』の研究の多くは陸地に関するものが多数であり、海洋・海域に関する検討は未知の課題であった。取り扱うにしても、島名の比定が中心であり、方法的には陸の地名比定と同様の方法が取られ、陸地の延長上にある研究であり、海洋・海域を独立した研究対象とすることはなかった。しかし、近年の海洋・海図研究の進展や、さらにはグローバル・ヒストリーの視野からの研究の進展により、『混一図』の海洋・海域に関する研究も可能となってきた。『混一図』の上部と下部には歴史的な「国都」の所在地が、元代の行政区によって記された帯状の一覧表と、作成に関する具体的な縁起等が記述されている。また、龍谷大学所蔵の『混一図』の姉妹図とも呼ばれている本光寺『混一図』、本妙寺『大明国地図』、天理大學『大明国図』が相互に近接しつつ異なる記述を持っていることが明らかにされており、1402年作成の『混一図』およびそれが記された龍谷図への関心が高められ、成立問題の進展に寄与する可能性を秘めている。

 『混一図』の海洋・海域部分の特徴として以下の8点が挙げられる。①朝貢国は一応記入されているが、特定の地図と言うより、遠方の海域に位置づけられている場合がある。②円形を以って島名のみを示す場合がある。③円形ではなく、ある形を持つ地形図として表現される島と島名がある。④単独の島名としてではなく、近隣の島との非地理的関係性をうかがわせる表現が見られる。⑤波形は申叔舟『海東諸国記』(1471年)に描かれた波形を踏襲しているように見受けられる。⑥海域部分の色彩は、色素分析により緑であることが確認される。⑦アラビア語発音の漢訳には桑骨八(ザンジバル)、哈納亦思津(アラビア語の赤道Hatt al-istiua)等、アラビア語の音訳に基づくと思われる漢字表記がある。⑧アフリカ大陸部の東側海域には、丸い枠取りをしたまま、地名を書き込んでいないものが散見される。

 海洋・海域の視点からながめると、まず『混一図』が作成された時代背景をより的確に議論することができると考えられる。より一層複合的な地域・海域の関係を理解でき、単に海という平板的な広がりを指すものではなく、海と陸が循環し、陸を形作ってきたとも言える海が現れてくるのである。また、海は交流を進め異なる文化・地域を複合させる場であり、そこでは、専門化し細分化された分業社会ではなく、より融合的なまた総合的な視野と方法が求められてくる。『混一図』のデジタル化復元により、表記の全てが鮮明化されたことにより、研究の焦点はその時代像の検討に移ったといえる。すなわち、『混一図』を取り巻く関連地図や関連資料をいかなる時代の文脈を設定してその中に位置づけるのか、また、関連する地図相互の歴史情報の連続性と非連続性を確認するか等の課題となってくると締め括った。

【議論の概要】

 村岡氏が地図としてだけではなく海洋図としての意義を見出されたことに深く感銘を受け、13世紀のモンゴル帝国時代の地図において、琉球が初めて記されることについての指摘も重要なものであると述べ、仏教系世界図から『混一図』で終わることなく、その後に成立した仏教系世界図への展開という部分にも注目すべきと認識を新たにし、当サブユニットの今後の研究方向を明確にしていただいた有意義な講演であったとコメントした。

【文責】アジア仏教文化研究センター

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