研究活動

研究活動

2016年度 グループ1ユニットA 第2回セミナー

報告題目比叡の森を護る
開催日時2017年1月13日(金)13:15~16:30
場所龍谷大学大宮学舎北黌204教室
ファシリテーター道元徹心(龍谷大学理工学部教授)
コメンテーター楠 淳證(BARCセンター長、龍谷大学文学部教授)
参加者137人

■報告者・報告題目:

磯村良定(BARC研究協力者、延暦寺一山 無量院住職、延暦寺総務部主事)

 「比叡山―伝教大師の衣の森―」

武 円超(BARC研究協力者、延暦寺管理部主事)

 「大師の森を守る―比叡山の森林施業―」

【報告のポイント】

比叡山は日本仏教の祖師の多くが修行したことより、「日本仏教の母山」と称されてきた。山としての歴史も踏まえながら、今日の森林管理の現状について、延暦寺の2人の僧侶が明らかにした。

【報告の概要】

 比叡山は約1700ヘクタールという高大な森林であり、林野庁の水源の森100選に選ばれるほどの水源林としての評価も高く、また、日本にくる渡り鳥の3分の1の種類が飛来し、鳥類繁殖地としても重要な役割を果たしている。延暦寺は300年後の比叡山のすがたを見据え、「比叡山森林継承プロジェクト」を立ち上げている。これは森林の現状把握を徹底し、適切にゾーニングしながら機能的に分類し、宗教的荘厳さの中にあって豊かな水源や水質を保ち、多くの動植物を育み、様々な資源となる森林を次世代に継承してゆくことを目的としている。

 境内林と境外林の2つに大別され、参拝者が目にする範囲が境内林であり、それ以外の部分が境外林となる。両林はさらにいくつか細分化される。

 第1には天然林。比叡山の人工林と天然林の割合は8:2といわれ、天然林は主にモミ林とブナ林からなる。昔から御堂等の建設資材として用いられてきたが、最近では貴重な水源涵養林として保全されている。比叡山全体から見ると天然林の分布範囲は非常に狭く、長く伐採や立ち入りさえも禁止されている区域であり、このことより昔の植生が残り続けていると考えられている。比叡山は滋賀と京都にわたる「都市近郊林」であるが、これほど豊かな植生が残っているところは、今日の日本にはほとんど無いといわれている。

 第2には水源林。比叡山には流水と表流水の2つの水源があり、これらの水を一所に集めてろ過処理し、生活用水として提供し、同時に下水処理もおこなっている。比叡山に点在する坊舎はこれらの水源の位置と重なり、古来より正確に把握されていたことがわかる。

 第3には観光林。1年を通して楽しむことができるよう、桜や紅葉を目立つところには植えている。

 第4には資材林。御堂等の建築や修繕に用いる資材とし、樹齢100~300年の木を用いている。

 第5には経営林。全体の約8割にあたり、組織的に伐採、植林、間伐、枝落ち等をおこない、時には業者と協力しながら進めている。

 これらのほか、防風林、防雷林、里山林としての役割も果たす森林に対し、様々な方針に沿いながら施業がおこなわれており、参拝者への宗教的な情操を深めてもらう環境作りと、僧侶が修行するために適した環境作りが進められている。この森林継承プログラムを今日の延暦寺に課せられた使命とし、比叡山を伝教大師の衣と思い、大師に包まれながら、日々行を修めていると締め括った。

【議論の概要】

 比叡山という修行の場の管理を通し、森林保全という在り方をもって「行」と解することの是非や、「森林法度」の解釈の確認も交えながら、比叡山の植生についての研究に資する貴重な成果を得ることができた。

【文責】アジア仏教文化研究センター

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