研究活動

研究活動

2016年度 グループ2ユニットA 第3回ワークショップ

報告題目障害福祉サービス事業所「わごころ」の取り組み-宗教法人としていかに社会福祉にかかわるか-
開催日時2017年1月10日(火)10:45~12:15
場所龍谷大学大宮学舎清風館B3階共同研究室301・302
報告者芝 賢良(宗教法人浄念寺障害福祉サービス事業所わごころ 代表役員・施設長)
コメンテーター長上深雪(龍谷大学社会学部教授)
参加者12人

【報告のポイント】

 宗教法人浄念寺が母体である障害福祉サービス事業所わごころの開設から今日にいたるまでの経緯が説明され、宗教者による社会活動の新たな可能性を知り得た。

【報告の概要】

 2003(平成15)年に施行された「支援費制度」により、今まで行政や社会福祉法人のみ行ってきた福祉サービスの提供は、社会福祉法人以外でも法人格を有すれば、参入できる仕組へと変わった。そもそも、福祉サービスは「第1種社会福祉事業」と「第2種社会福祉事業」とに分かれており、「第1種社会福祉事業」とは特別養護老人ホーム等といった「利用者への影響が大きいため、経営安定を通じた利用者の保護の必要性が高い事業」のことであり、行政や社会福祉法人が経営を担っている。また、「第2種社会福祉事業」とは在宅のサービス等といった「比較的利用者への影響が小さいため、公的規制の必要性が低い事業」のことであり、経営主体については特に制限が無い。つまり、届けを出せば、宗教法人でも「第2種社会福祉事業」に関しては、事業経営が可能ということである。

 宗教法人浄念寺の代表役員である芝氏は障害福祉サービス事業所わごころを開所し、「就労移行支援」と「就労継続B型支援」を行っている。「就労移行支援」とは就職をするための訓練や支援をする事業である。また、「就労継続支援」にはA型とB型があり、A型は雇用契約を結んで支援を受けながら働くというものに対し、B型は一般就労が難しい利用者が、事業所において軽作業等を行なう事業である。事業開始にあたり、直面したいくつかの問題が紹介された。まず、1つ目は事業資金集めについてであり、社会福祉法人とは異なり、行政からの補助金等の受給が困難なことである。また、2つ目は施設・運営にかかわる知識が乏しく、施設整備にかかる法令等の知識が不足していることや、有資格職員の確保も問題となった。さらには、施設の開設における用地、建物の確保といった準備についても容易ではなかった。芝氏は市内にある古い倉庫を改装して使用することにし、約600万円の改装費を要した。また、事業を始めるに当たって、寺院規則の変更も必要となった。これらの他にも、利用者の確保や授産作業の確保があり、諸規定の整備なども含め、様々な準備が必要であった。

 芝氏の信条は「99パーセントだめでも、1パーセントの可能性」であると話す。実際、「就労移行支援」にしても、「就労継続支援B型」にしても、他の施設においては十分に動ける人しか利用していない。しかし、わごころは障がいの重軽度関係なく受け入れ、1パーセントの可能性があるのであれば、なんとかチャンスができてくるのではというのが、わごころの目指すところである。

 運営面については、昨年度の実績は授産収入が643万961円、授産支出が641万3000円で、利用者へ支払った工賃が約500万円であった。利用者1人あたりの月額は1万1681円、大分県の施設の平均は1万6130円でまだまだ平均には達していないが、わごころのある日田市は仕事が少なく、単価が安いなかで、まずまずの数字を出している方だと言う。また、「就労移行支援」に関しては、就労実績を上げない限りは、国、県から補助金はだんだん減らされていくなか、わごころは毎年2、3人ずつ一般就労できており、実績を重ねている。そして、「就労移行支援」は261日の開所日数に対し、延べで2156人の利用者があり、国からの給付金は約2000万円。「就労継続支援B型」は261日で、延べ4498人の利用者があり、給付金が3275万3070円であった。約5300万円の収入があるが、実際には人件費、事務費、事業費、その他の支出で約5100万円の支出があるので、約200万しか毎年残っていかない状況である。

 このような厳しい状況のなか、芝氏は職員、利用者、経営者という3つのサティスファクション(満足)を大切にしている。これまでの福祉は利用者ばかりを大切にしていたため、職員の仕事がなかなか続かず、良質なサービスの提供が困難であった。この悪循環を打開すべく、この3つの満足を経営理念としている。全ての人が満足することによって相乗効果が生まれ、サービスも施設運営も職員のモチベーションも、より良いものになっていくと考え、実際に職員のなかでも介護福祉士等といった資格を取らせて欲しいという声も増えてきた。

 福祉にしろ、寺院にしろ、これからはより能動的に動き、常に向上心を持つ必要がある。『無量寿経』には「和顔愛語 先意承問」という言葉があり、和やかな顔と優しい言葉で、まずは自分自身が相手の意を汲み取って活動していくことを教えられる。福祉においては、利用者が今何を思い、何を考えているのかということを、しっかりと自分のこととして受け止め、それをサービスに変えていくということが大事である。また、特に過疎地の寺院においては、切迫した状態であり、そこになんとか福祉の思いを織り交ぜながら、諸々の事業を展開することも1つの方策として検討されるべきと締め括った。

【議論の概要】

 福祉施設の経営や職員の福利厚生に加え、この事業を通しての伝道方法等、活発な質疑応答が行われた。

【文責】アジア仏教文化研究センター

DSC_8129.JPGDSC_8130.JPG

このページのトップへ戻る