研究活動

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2017年度 第1回 国際シンポジウム

報告題目南都学・北嶺学の世界―法会と仏道―
開催日時2017年 6月 3日(土)~4日(日)
場所法相宗大本山薬師寺
参加者191名(両日合計)

■講演者・講演題目:

3日(土)(9:30~16:30)

第1部 法会と論義(9:30~12:00)

永村 眞(日本女子大学名誉教授)

「中世南都諸寺の法会 ―講説・論義・打集を中心に―」

楠 淳證(龍谷大学教授)

「法相論義と仏道 ―「一仏帰依」か「多仏帰依」か―」

【法会実演】薬師寺衆僧

 薬師寺伝灯の法会

第2部 法会の空間(13:30~16:30)

ニールス・グュルベルク(早稲田大学教授)

「法会と講式 ―南都・北嶺の講式を中心として―」

フレデリック・ジラール(フランス極東学院教授)

「法会と芸能 ―鴨長明、道元における月講式、三界唯心、月の和歌―」

藤井恵介(東京大学大学院教授)

「法会と仏堂」

【討論会】

コーディネーター:楠 淳證

登壇者:永村 眞、ニールス・グュルベルク、フレデリック・ジラール、藤井恵介

4日(日)(9:30~15:30)

第3部 僧の生活と持律(9:30~12:00)

ポール・グローナー(ヴァージニア大学名誉教授)

「13・4世紀の天台円頓戒に関する論義 ―実導仁空を中心に―」

蓑輪顕量(東京大学大学院教授)

「南都の戒律 ―中世復興から現代を考える―」

玉木興慈(龍谷大学教授)

「親鸞と戒律 ―無戒名字の比丘―」

第4部 東日本大震災と仏教 ―仏道の現代的意義―(13:30~15:30)

【基調報告】大谷徹奘(法相宗大本山薬師寺執事)

「今、仏教に何ができるか ―被災地をめぐって―」

【討論会】

コーディネーター:若原雄昭(龍谷大学教授)

登壇者:

金澤 豊(龍谷大学世界仏教文化研究センター博士研究員)

「岩手県陸前高田市における浄土真宗本願寺派の対人支援について」

安部智海(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)

「宮城県名取市における浄土真宗本願寺派の対人支援について」

高見昌良(天台宗務庁社会部社会課課長)

「問われた我々の存在意義 ―天台宗防災士の誕生―」

森本公穣(華厳宗大本山東大寺執事)

「仏教徒として、今やるべきこととやっておくべきこと」

■共催:法相宗大本山薬師寺

【シンポジウムのポイント】

 「南都学・北嶺学」という名称は、このたび新たに創作された造語である。すでにある奈良学や京都学・滋賀学などとは異なり、あくまでも「仏教学」を基軸とした南都・北嶺に関する諸研究をさして「南都学」「北嶺学」と呼ぶ。いわば、仏教学・歴史学・文献学・図像学・文化学等によって個々に研究が進められてきた南都・北嶺の諸学問を、「南都学」「北嶺学」という大きな入れ物の中に入れ、「仏教学」を基軸とする複合的研究を推進することで、新たな知見を導き出そうとする試みが、この度の国際シンポジウムの趣旨である。

【シンポジウムの概要】

 1日目の第1部「法会と論義」、第2部「法会の空間」においては、仏教学・法会学・歴史学・建築学の研究者から講演がなされ、「法会と仏道」の意義が中心的な内容であった。

 これらの後におこなわれた討論会は、前の講演をうけながら進められた。そもそも食堂は人が集まり研鑽を深める場として位置づけられ、インド以来のその意義が日本においても明確に踏襲されていることが指摘され、この度の薬師寺食堂の再建においても、第一の目的がそこにあることが、先ずは全登壇者の間で共有された。また、食堂をはじめとする金堂や講堂等の建物が何らかの理由で消失したとしても、機能を他の建物に移して仏事が営まれ続け、時には他の建物でおこなわれながらも、法会が確実に継続されてきたことが紹介された。

 「法会学」の体系についても触れられ、柱としての法会とそれを実現させている様々な要因があるとし、仏・法・僧の三宝が代表例として挙げられた。寺院が寺院として成立するための基本的な条件であるこれら三宝をもって、能動的に実現されてきたものが法会であり、法会はこれら三宝の集合体とも言い得るものであり、仏教の総合的な学問として位置づけることが可能である。多角的な研究成果の集合体が、新たな知見を生んでいくことを、「法会学」の提唱の上に明確に知り得ることとなった。

 2日目の第3部「僧の生活と持律」、第4部「東日本大震災と仏教 ―仏道の現代的意義―」においては、「法会と仏道」を実践する僧侶の生活規範である戒律について、多方面の研究者から講演がなされた。また、近年の未曾有の大震災の後、法相宗、浄土真宗、天台宗、華厳宗の復興支援について、それら各宗派の僧侶より報告がなされた。

 続くそれら各宗派の僧侶たちによる討論会においては、最初に被災地における支援において、宗教者、仏教者だからこそ都合が良かった点、また、都合が悪かった点についてコーディネーターから問いがなげかけられ、都合が良かった点としては、袈裟衣を着ていることで初対面の方でも受け入れられ易い場合が多かったという意見があった。また、都合が悪かった点のなかには、宗教者、仏教者は苦しみや悩みを目の前にして初めて行動をおこそうとし、苦しみや悩みが生まれる前から何かできることがあるのではないかという気づきも挙げられた。

 また、登壇者それぞれの取り組みに対してコメントするなか、同宗派内の僧侶であっても個々人の裁量に委ねられる部分が大きく、支援のばらつきが目立つ場合もあるなか、天台宗の「防災士」は支援の統一性をもたらす点で優れており、宗派内の共通認識を高め、研修や訓練を重ねていくことが必要となるとし、活発な意見交換を通して今後の方向性や課題を確認しあった。

 この度の国際シンポジウムの開催は、当センターの研究プロジェクトである「日本仏教の通時的共時的研究―多文化共生社会における課題と展望―」を、南都学・北嶺学の研究の上に具現化したものであり、今後の展開に大いに資する成果を得ることができた。

以上

【文責】龍谷大学アジア仏教文化研究センター

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