研究活動

研究活動

2017年度 グループ1ユニットB 第1回学術講演会

報告題目大谷光瑞研究をめぐる諸問題―旅順博物館開設100周年にあたって―
開催日時2017年6月30日(金)14:45~18:30
場所龍谷大学大宮学舎本館講堂
ファシリテーター三谷真澄(龍谷大学国際学部教授)
参加者102人

■講演者・題目:

王 振芬(旅順博物館館長)

「旅順博物館所蔵の仏教文物」

※通訳:徐 光輝(龍谷大学国際学部教授)

掬月誓成(別府大谷記念館副館長)

「大谷光瑞師の都市計画について」

【講演のポイント】

 大谷探検隊の将来品を所蔵・研究する旅順博物館の開設100周年にあたり,日中の研究者や博物館関係者が集い,講演会が開催された。博物館所蔵資料の紹介や,国際的な研究動向の解説がなされ,今後の研究の方向性が確認された。

【講演の概要】

 王振芬氏は,旅順博物館の所蔵資料と,同館が龍谷大学を含む他機関と提携しながら進めてきた研究について講演した。同博物館には,100点以上のガンダーラ仏教美術や経典などが所蔵されており,また戦前に日本の二楽荘などから移された大谷探検隊関連の仏教文物が多数存在している。これらの所蔵品の調査や研究,あるいは展示が行われるようになったのは,比較的最近のことであり,所蔵品の総数についても現在調査中である。

 大谷探検隊関連の所蔵品は,年代的には西暦1世紀から11世紀までのものが中心である。おおむね大型のものは少なく,小型のものが多い。量的に最も多いのは,経典をはじめとする文字資料である。これらの資料は,全体的に残片が多く,接合や復元の作業に時間を要している。こうした復元作業は,近年ではデジタル・アーカイブ構築の一環としても行われるようになっている。これまでの研究の結果,新疆や中央アジアからの出土品と考えられてきた大谷コレクションのなかに,敦煌や北京の寺院からの出土品と判明したものが一部存在していることがわかってきた。

 旅順博物館では,2003年から龍谷大学との共同研究を,両国の科学研究費の助成などを受けながら進めてきた。共同研究の主な内容は,文字資料の解読であり,日中から20人以上の研究者が参加してきた。この研究では,はじめて電子データが駆使されるようになった。また,2015年度からは同博物館と北京大学との共同研究も開始されている(2019年度まで継続の予定)。これらの研究の成果は,各国での国際シンポジウムの開催や,専門誌への論文掲載により少しずつ公表されてきており,研究と研究者間のネットワーク作りが着実に進展している。

 掬月誓成氏は,大谷光瑞による中国と日本での都市計画の構想について,いくつかの事例に基づき解説した。光瑞は,アジア各地で実験的な農業開発を試みようとしており,この計画については,『大谷光瑞興亜計画』全10巻(昭和14年6月~15年10月)に詳述されている。そのねらいとしては,日本政府による「大東亜共栄圏」の企図とは異なり,日本によるアジア支配ではなく,アジアの興隆による西洋の植民地主義への対抗という意図があった。

 たとえば光瑞は,中国の首都を寒冷地の北京から浙江省の太湖の近くに移すべきと主張しており,それは各種の地理学的な指標に基づき,一国の首都に最も適した土地を選出した結果であった。光瑞はまた,中国の交通(鉄道等)や港湾,海運,産業用のダムなどのインフラ整備についても立案していた。こうした光瑞による都市計画の構想は,日本国内の二楽荘においては別のかたちで実現されており,そこでは学校経営や温室での希少な農作物の栽培が行われるなど,小都市のような施設づくりがなされていた。

 近年では,光瑞による『別府観光市建設試案』(昭和22年5~6月?)が発見され,彼が温泉地である別府の大改造計画を企てていたことが判明した。光瑞は,同地の港,駅,道路の整備のほか,発電所の設置や四季折々の農産品の栽培に加え,宿泊施設,療養所,娯楽機関等の建設についても多面的に考案しており,そのハード面を重視した観光地化計画には,彼の学識の広さが反映されていた。

【文責】アジア仏教文化研究センター

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