研究活動

研究活動

2017年度 グループ2ユニットA 第1回国内シンポジウム

報告題目仏教×社会福祉問題=∞
開催日時2017年10月31日(火)13:00~16:00
場所龍谷大学大宮学舎清和館3階ホール
ファシリテーター長上深雪(龍谷大学社会学部教授)
参加者35人

■報告者・題目:

清水道子(保護司、浄土真宗本願寺派真光寺坊守)
「保護司活動を通して」

松島靖朗(特定非営利活動法人おてらおやつクラブ代表理事)
「「お寺の社会福祉活動」を支えるもの〜おてらおやつクラブの現場から〜」

石川到覚(大正大学名誉教授)
「仏教のボランタリズムとソーシャルワーク」

■主催:龍谷大学世界仏教文化研究センター アジア仏教文化研究センター
■共催:龍谷学会
■協力:日本仏教社会福祉学会、特定非営利活動法人JIPPO、特定非営利活動法人おてらおやつクラブ


【報告のポイント】
 自身の宗教心、信仰心を背景として、社会的な問題に関わっていくことは、様々な公共圏において、今後ますます求められることである。しかし、世間からの宗教への関心は高まってはいるが、宗教と社会問題を結びつける一般的な意識はまだまだ低いことが現状であり、宗教者の側からの積極的な提案が課題である。そこで、仏教社会福祉の実践者と研究者より、最新の報告がなされた。

【報告の概要】
清水道子(保護司、浄土真宗本願寺派真光寺坊守)
「保護司活動を通して」
 保護司とは法務大臣に任命された非常勤の国家公務員であるが、任務中に事件等に巻き込まれた時に保証されるための身分という扱いで、実際は無給の民間ボランティアである。保護司になるための条件には4つあり、社会的信望、熱意と時間的余裕、生活の安定、心身の健康であり、任命時の年齢が65歳以下である。禁錮以上の刑に処せられた者はなることができず、定年は75歳である。
 裁判所で保護観察処分の判決が出たところから、保護司とその対象者との関わりが始まる。対象者の見守り、支援、相談が保護司の主な任務であり、月に1度、対象者が保護司の家において面接し、生活の様子を聴き、それを保護観察所に報告する。その他に、地域における犯罪・非行の防止活動等がある。
 清水氏は所属寺院の門徒さんの相談を受けたことがきっかけで保護司になり、以後15年が過ぎている。対象者の話を聴くなか、本人が自分の言葉で話をすることで、自分を見つめ直し、自分に気付いてもらうこと、そして、可能であれば良心を呼び起こしてもらうことと考える。最近の対象者は鬱病や発達障害に加え、様々な問題を抱える傾向にあり、各方面の専門機関との連携強化がさらに重要となってくる。保護司の活動を通し、自身を見つめ直す機会とも考え、決して独りではないことを対象者に伝えていると締め括った。

松島靖朗(特定非営利活動法人おてらおやつクラブ代表理事)
「「お寺の社会福祉活動」を支えるもの〜おてらおやつクラブの現場から〜」
 お寺おやつクラブを一言で表すと、お供え物を「おさがり」としてお裾分けする、お寺の社会福祉活動である。貧困問題の解決の糸口を探ることを第一の目的としている。
 この活動を通じてお寺という場所も知ってもらいたいという思いから、お寺を冠して名付けられたが、今日までの活動をもってその意義が少しずつ明らかとなってきた。「お寺」とは仏様、ご本尊様をお守りする場所。「おやつ」とは仏様の教えであり、法を味わうこと。「クラブ」とは仏様の教えを学び、実践する者の集まりであり、「サンガ」を意味する。なんとなく名付けたが、正に仏・法・僧の三宝を敬う活動であると理解できる。お寺の社会福祉活動と言われると、斬新なアイデアをもって、何かを始めることが想像されがちだが、仏・法・僧の三宝を敬う仏教徒としての基本的な在り方そのものである。
 クラブの活動が全国に広がった要因の1つには、日々の生活のなかに人々の尊い信仰の姿が確かに存在していることに他ならない。2つにはお寺や僧侶が有する聖性への期待がある。そして、3つには僧侶の布施行であり、自利・利他の精神の実践である。
 僧侶の社会福祉活動においては、そもそも利他行は当然とも言われるが、それは自分の行であることが理由である。自利・利他のプロセスを通じ、副次的に表れ出て来るのが社会福祉活動であると締め括った。

石川到覚(大正大学名誉教授)
「仏教のボランタリズムとソーシャルワーク」
 日本における仏教のボランタリズムとソーシャルワークとの関係を描き出しながら、仏教の社会性および公益性に関する実践課題として、以下の3点が認識される。1つに仏教のボランティア理念とソーシャルワークの位置づけ。2つに仏教ソーシャルワークの実践的な課題。3つにグローカルな仏教ソーシャルワークの展望である。
 これらは仏教思想による福祉実践が仏教福祉となり、その歴史的・社会的実践が仏教社会福祉を形成し、仏教ソーシャルワークによって焦点化され、そのすべてを仏教文化が包含する関係となる。仏教の実践原理によって教化・ボランティア活動が展開され、ソーシャルワーク実践では、基底的な価値を形成することとなる。
 石川氏は仏教ソーシャルワークについて、価値(倫理)・知識・技術の裏打ちと意味付けを積み上げて構造化を試み、これはヒューマン・サービスの可視化への課題に応答するものである。第1層に専門職倫理と仏教福祉的価値を土台に据える。第2層に専門的な知見と知恵とを実践知と関係力で紡ぐ。第3層に専門的な技術と技能を具象化する。これら3層構造をもって、仏教ソーシャルワークの構図を明確にし、ソーシャルワーク専門職の仏教福祉思想による価値形成をなすものである。
 ローカルで多様なコミュニティ活動を仏教ソーシャルワークに求めること、そして、仏教福祉思想に裏打ちされた社会的・公益的な価値の形成の重要性を示し、この度の報告を締め括った。

【議論の概要】
 まず、仏教において、教理と実践はフィードバックする関係が大前提となることを改めて確認しあった。また、松島氏の報告が例にあげられ、「お供え」と「おさがり」の習慣は、仏教だけに限らず広くインドで用いられてきたのであり、俗なるものが聖なるものとなり、再び共有されていくという在り方であるが、今日では本来の俗と聖の関係性が見失われており、時代、地域等の様々な側面から、人々の宗教意識の変化を、改めて認識することとなった。

【文責】アジア仏教文化研究センター

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