研究活動

研究活動

2017年度 グループ2ユニットA 第1回国際シンポジウム

報告題目仏教と自死に関する国際シンポジウム
開催日時2017年11月9日(木)~10日(金)
場所9日:浄土真宗本願寺派伝道院 / 10日:龍谷大学響都ホール校友会館
参加者9日:57人 / 10日:128人

■報告者・報告題目:

【9日】(※関係者のみ)
第1部「自死・自殺をめぐる課題の共有にむけて」
①村澤孝子(京都府精神保健福祉総合センター)「関西における自死の現状と課題」
②野呂 靖(龍谷大学)「日本における〈自死〉・〈自殺〉用語の用例と自殺観の変遷」
③NPO法人京都自死・自殺相談センター「研修方法の紹介―相談団体の事例より―」

第2部「日本における宗教者の自死に関する活動―その現状と課題―」
④関本和弘(融通念仏宗、自死に向き合う関西僧侶の会、NPO法人大阪自殺防止センター)
⑤リメンバー名古屋自死遺族の会
⑥竹本了悟(浄土真宗本願寺派総合研究所、NPO法人京都自死・自殺相談センター)

第3部「海外における宗教者の自死に関する活動」
⑦釋慧開(佛光山、南華大學學術副校長、佛光大學佛教學院院長)
⑧ボーダナンダ(ミトル・ミツロ運動、青少年リハビリセンター創立者)
⑨ジンジ・ウリングハム(ウパーヤ禅センター、病院チャップレン、精神医療医)

【10日】(※一般公開)
基調講演
佐々木閑(花園大学教授)「仏教は自死・自殺にどう向き合うか」

提言
①小川有閑(大正大学地域構想研究所・BSR推進センター)
②野呂 靖(龍谷大学)
③イレーヌ・ユーエン(米国ナローパ佛教大学)

コーディネーター:岡野正純(孝道教団)

声明文の発表
ジョナサン・ワッツ(孝道教団・国際仏教交流センター)
竹本了悟(浄土真宗本願寺派総合研究所、NPO法人京都自死・自殺相談センター)

■主催:
浄土真宗本願寺派総合研究所
龍谷大学世界仏教文化研究センター アジア仏教文化研究センター

■共催:
孝道教団・国際仏教交流センター(IBEC)、曹洞宗総合研究センター
大正大学地域構想研究所・BSR推進センター
教団附置研究所懇話会自死部会、自死に向き合う関西僧侶の会
NPO法人京都自死・自殺相談センター

【報告のポイント】
 日本に限らず、アジア各国において自死は深刻な社会課題であり、それぞれの文化や宗教等に根ざした特徴的な取り組みがある一方で、国を越えた相互の交流はほとんどなされていない。そこで、自死問題に取り組む様々な専門家を招聘しての国際シンポジウムを開催し、活動報告や意見交換をおこなった。

【報告の概要】
 9日は関係者のみの非公開のかたちで開催された。第1部「自死・自殺をめぐる課題の共有にむけて」、第2部「日本における宗教者の自死に関する活動―その現状と課題―」、第3部「海外における宗教者の自死に関する活動」の3部で構成され、国内外の自死に関する専門家より報告がおこなわれた。
 龍谷大学の野呂靖氏は「日本における〈自死〉・〈自殺〉用語の用例と自殺観の変遷」と題した報告において、最近の「自死」という表現の定着理由や、日本人の自殺観の変遷についてわかりやすく説明し、参加者から好評を博した。「自死」という表現の定着理由については、先ず自らの意思だけに限らず、社会的・経済的な諸問題により死を選ばざるを得ないケースが増えているということと、遺族への配慮より「殺す」という表現を避けるということの2つが挙げられた。しかし、賛否両論あることより、これからも議論の必要があり、用語の使用については今後も高い関心が寄せられていくであろう。

 10日は一般公開され、先ずは花園大学の佐々木閑氏が「仏教は自死・自殺にどう向き合うか」と題し、基調講演をおこなった。古代インド仏教の戒律に関する研究に基づき、それをいかに現代へ活用すべきかを考察するなか、自死の問題はとても密接に関わる。仏教の世界観は一切皆苦であり、生老病死のような根本苦は決して無くならない。この苦の受けとめ方を変えることにより解決をはかるのであり、釈尊は厳しい修行を重ねてそれを体得したという。しかし、誰もが容易にできることではなく、長い年月を要するのであれば、沢山の弟子が集まることはあり得ないはずで、1つ1つの苦悩が解決されていく過程が重要であり、そのなかに安堵・安楽を得る体験が、人々を惹き付け続けている。釈尊の体験を追体験しようと苦悩する人々が集まり、サンガが形成されたのであり、釈尊滅後はこのサンガが苦悩する人々を救ってきたのであり、多数の自殺志願者もそのなかに含まれていると考えることができる。
 そもそも、最初期の経典には自殺を罪悪とする記述はない。また、仏教の法律である律蔵には、他人を殺すことを罪とする文脈はあるが、自殺についての言及はない。後に罪悪とする記述は出てくるが、書かれた時代や当時の状況について十分に検討する必要がある。あくまでも、自殺については、せっかくの釈尊の教えに出遇う機会を失い、もったいないことであるという認識はもつべきであると締め括った。

 続いて、孝道教団統理の岡野正純氏のコーディネートのもと、各方面の専門家からの提言と、それらをもってのディスカッションがおこなわれた。1人目の大正大学地域構想研究所の小川有閑氏は、今回のシンポジウムにおいて国内外の様々な活動報告をうけ、それぞれの取り組みの独自性が目立つなか、外部との連携の少なさを指摘した。今後も医療従事者や宗教者に幅広く呼びかけ、協働の輪を広げる必要性を主張した。2人目の龍谷大学の野呂靖氏は、未だに根強く向けられる自殺者への偏見や、死を遠ざけようとする風潮がナンセンスであることを指摘した。また、電話相談における経験を通し、必要とされる場所や機会を作り、悩む人が生きる意味や生き甲斐を見つけることの重要性を述べた。3人目の米国ナローパ仏教大学のイレーヌ・ユーエン氏は、仏教のサンガにおいては苦悩する人も支援する人も、共に仏道を歩む仲間であり、困難を克服した経験は共有され、励みになると述べ、今後は宗教や専門領域を越えての協力の強化も重要であることを改めて指摘した。

 提言、ディスカッションの後、今回のシンポジウムを通しての「声明文」が、孝道教団・国際仏教交流センターのジョナサン・ワッツ氏と、浄土真宗本願寺派総合研究所の竹本了悟氏によって読み上げられた(※以下、全文を掲載。)。

「声明文」

自死の苦悩を抱える〈あなた〉へ

朝、目覚めた時、私たちは〈あなた〉へ想いを向けます。そして、今日という1日が〈あなた〉にとって、居心地の良い和やかな日となることを願います。夜、眠りにつく時、私たちは〈あなた〉へ想いを向けます。そして、今日という1日に起こった〈あなた〉の苦悩へ想いを馳せます。

この度の「仏教と自死に関するシンポジウム」を通じて、私たちは、国を超え、宗派を超えて、1つの想いを共にしました。それは、仏教者は今まさに苦悩している〈あなた〉の心を和らげるために居るのだ、ということです。私たちは〈あなた〉の心が少しでも和らいで欲しいのです。〈あなた〉の心が楽になり、安心した日々が過ごせることを願っています。

私たち仏教者は、世界中が温かさに満ちあふれ、〈あなた〉が絶望的な孤独を感じなくてすむように、出来る限りの行動を起こします。 そして、いつでもどこでも、自死の苦悩を抱える〈あなた〉と共に歩みます。

 シンポジウムの閉会に臨み、竹本了悟氏は自死に関する様々な苦悩を和らげるため、これからも国を越え、宗教を越え、手を取り合っていきたいと締め括った。

【文責】アジア仏教文化研究センター

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