研究活動

研究活動

2017年度 グループ1ユニットA                  文化講演会「聖地に受け継がれし伝灯の法会」〈第2回〉

報告題目南都の伝灯法会-仏に成る道-
開催日時2017年12月2日(土)13:30~15:00
場所龍谷大学響都ホール校友会館
報告者楠 淳證(龍谷大学教授)
参加者37人

■共催:龍谷大学仏教文化研究所

【講演のポイント】
 北嶺を舞台に「聖地に受け継がれし伝灯の行」を総合テーマとした2015年の文化講演会シリーズに続き、今年度は南都を舞台に「聖地に受け継がれし伝灯の法会」を総合テーマとする文化講演会シリーズを開催している。これらを踏まえ、いよいよ「仏道」のあり方が明らかとなってくる。

【講演の概要】
 2008年9月に刊行された『唯識-こころの仏教-』(楠淳證編、自照社出版)所収の永村眞氏稿の「中世興福寺の学侶教育と法会」によると、「法会」は「仏法相承を象徴する場」にして「法悦を共有する場」とし、中心となる6種の法要が挙げられる。経典の読誦を柱とする読経(大般若経会など)、経論疏釈の講演を柱とする講説(心経会・常楽会・三蔵会)、懺悔作法を柱とする悔過(修正会・修二会)、経論の義理を問答することを柱とする論義(三会三講のほか唯識会・法華会・慈恩会など)、密教作法による祈祷を柱とする修法、戒律遵守のための戒文確認を柱とする説戒(布薩・自恣)である。これに歌踊音曲などが加わって構成される一連の行事を法会と呼ぶのである。法会は祝い事や願い事等の目的をもって必ず開催され、上記の各種法要がその目的達成の核となる。
 東大寺や薬師寺等でなされる修二会における中心は悔過法要であり、古くから全国的(東北から九州におよぶ)に行われてきた。正式には「修正月会」「修二月会」等と呼ばれ、新年を迎えるにあたって天下安穏・万民快楽・五穀豊穣等を願う「祈年」の法要として実施された。しかし、悔過の根幹は「自己の仏道」であり、『大般若経』には自己の過(とが)を悔い改め、その過を生み出してきた煩悩を捨て、仏道実践する善友に親近・讃嘆等することにより、やがては輪廻の流れから仏道の流れに入り、般若波羅密多を実践することで悟りを開くことできると記されている。
 さらには、東大寺が正依の経典としている『華厳経』には、悔過除罪・随喜功徳によって無量の諸仏を恭敬勧請することができ、それは回向をよく知ることによると説かれる。東大寺二月堂の修二会では盛んに回向がなされるが、それは修二会の悔過法要が行者一人のためではなく、万人にための仏道であったからに他ならない。一方、法相宗の開祖である慈恩大師基は『法華玄賛』に、悔過しなければ仏道実践が不可能となり、むしろ輪廻の原因となる諸悪が次々に発露すると述べている。師の見解は法相宗所依の論典の1つである『顕揚聖教論』にも見られ、悔過こそが仏道実践の基本と考えられていたことがわかる。行者個人のあり方から広く一切の衆生に向けられていったところに、東大寺や薬師寺等でなされた修二会の意義があったと言い得るのである。
 悔過法要に対して読経・講説・論義は仏徳讃嘆であると同時に、教義学問の研鑽をもって仏道を歩む道であり、なかでも教義をめぐる問答をおこなう「論義」は、南都の学僧世界の中心をなす一大仏事であった。これは「いかにして仏道を歩むべきか」という課題を行者につきつけるものであり、教義学問の研鑽を通して仏道を実践していく道と言い得るのである。
 また、説戒とは布薩のことであり、反省・懺悔を通して善事増長と悪事除滅をはかるものである。戒律による止悪作善の暮らしにより、穏やかな正念の境地を得て、禅定実践するなかで悟りを開いていくことが示されており、説戒もまた行者の仏道実践の一環であることがわかる。そして、密教作法による祈祷を柱とする修法とは、口に真言を唱え、手に印を結び、心に仏菩薩のすがたを観じ、国家または個人のために行うものである。他者のために行う利他的行であり、これも行者の仏道実践の一環であることは明白である。
 東大寺修二会(俗称:お水取)も薬師寺修二会(俗称:花会式)も伝灯の法会であるが、心に「信仰」をもって実修あるいは参拝している人以外にとっては、「伝統的文化行事」(文化遺産)として、その華やかさを求めている傾向にある。しかし、実は伝灯の法会は「行」そのものであり、「仏道」そのものであった。とはいえ、論義法会などを見ても、仏道の具体的なあり方である「信仰」という面を、直接的に打ち出すものではなかったため、やがては必然的に同信のものによる「講」が作られ、「講式」による法会が形成されていった。それは、仏道を実践するために、信仰する諸尊の浄土に生まれて見仏・聞法し、自利・利他に仏道を完遂していこうとする尊い道であった。

【文責】アジア仏教文化研究センター

DSC_0011.JPG

このページのトップへ戻る