研究活動

研究活動

2017年度 グループ1ユニットA 第3回研究会

報告題目比叡山の植生について
開催日時2018年1月18日(木)15:15~17:15
場所龍谷大学大宮学舎 清風館3階共同研究室1・2
参加者15人

■報告者・報告題目:
土屋和三(BARC研究員)
「山修山学の山の自然誌―比叡山の生態復元・創成のこころみ―」
道元徹心(龍谷大学理工学部教授)
「近世比叡山における山修山学の理念―止観院蔵『比叡山再興縁起』等の史料より―」

【報告のポイント】
 比叡山の植生について、生態学調査を基礎とした現状報告と将来の自然環境への課題を提示した。また、叡山文庫所蔵で比叡山の植生と山林管理に関する近世の文献を翻刻紹介し、比叡山における山修山学の理念の一面を論じた。

【報告の概要】
 土屋和三氏は、これまで共に比叡山の植生研究に関わってきた人たちについて紹介した。その人たちが比叡山でどのような立場で活躍をし、土屋氏がその影響を受けたかについて説明がなされた。
 続いて同氏は今回の報告の中心となる江戸時代の比叡山全図(叡山文庫・止観院蔵書)を紹介した。大型の絵図であるため、予め研究機関で絵図全体を9分割しておき、分割部分についてプロジェクターを使用して説明していく手法がとられた。江戸期と現在を比較して比叡山の植生について解説をし、都会近郊でモミやブナの天然林が原生している珍しい山であることが指摘され、研究会参加者の関心を引き立てた。具体的に天台権現山・横川・大比叡・無動寺に総計50本のブナが原生している。江戸期には山の地肌が見えていた場所に、今ではブナなどの樹木が育っており、その天然林近くを日々比叡山の行者が歩き修行していることが理解された。また、自生の種子からの苗づくりによる後継樹の育成が試みられている紹介があり、比叡山の自然環境の再生についての課題が提示された。
 植林地においては、杉と桧が比叡山の植林の歴史を語っている。根本中堂の周囲の杉は大木が多く、日光の杉並木や羽黒山参道の杉並木の樹形に類似している点が報告された。天海僧正などの人物のはたらきで植林された推測もあり、今日では遺伝子解析からそれが明らかになる可能性もあるという。ところで、植林に関して年輪調査から判明したところでは、根本中堂北側に根本直径145センチの325年になる杉があり、飯室慈忍和尚廟には385年程の杉がある。
 天台権現山の杉・峯道の玉体杉は自生の杉の可能性があり、比叡山の森林の成り立ちと環境史の調査が課題である。また桧の植林地は生物が乏しく、宗教的感性が湧かないとの藤波阿闍梨師の言葉が紹介された。

 道元徹心氏は、叡山文庫所蔵の近世文献を翻刻紹介し、近世において伝教大師からの山修山学理念がどのように継承されているかを論じた。文献として『比叡山結界之証文』(生源寺蔵)・『比叡山再興記』・『建仁寺より当院に菩提樹の来たりし証〜』(止観院蔵)(止観院蔵)を翻刻、また『五谷分山伐木材』(生源寺蔵)・『杉桧伐採件』(延暦寺蔵)を資料紹介した。天台大師智顗の思想に基づき最澄が山修山学の理念を形成し、近世において如何にそれが継承されているかを指摘した。ポイントとして、信長の叡山焼き討ちの元亀の法難直後の叡山について・叡山の結界の問題・堂塔伽藍の維持する上での寄附について・堂塔修理費用のための木材伐採などの内容が解説された。

【議論の概要】
 土屋氏に対して「一昨年、江戸期比叡山全図は大津歴史博物館で展示されたが、研究用に同図が公開されたことは本研究会が初めてのことであり、貴重な報告となった。回峯行者は比叡山の天然林という環境から宗教的感性が磨かれており、山修山学の理念を保つには比叡山の環境保全が大切である」と、司会者からコメントがなされた。

【文責】アジア仏教文化研究センター

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