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ブータン王国ケサン王女殿下記念講演会

開催日時2011年2月14日(月)10:30~12:00
場所龍谷大学大宮学舎東黌103教室
参加者500人
主催:龍谷大学アジア仏教文化研究センター(BARC)
龍谷大学人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター(CHSR)
共催:京都環境文化学術フォーラム
 
■講題:仏教国ブータン王国の国民総幸福度(GNH)政策
      ―仏教思想の理念が国民総幸福度政策にどの様に活かされたのか―
 
       The Program for Gross National Happiness in the Buddhist Kingdom of Bhutan― 
             The Buddhist Values Expressed in the Gross National Happiness Index
 
■講師:アシ・ケサン・チョデン・ワンチュック王女殿下
       Her Royal Highness Princess Kezang Choden Wangchuck
 
■ケサン王女殿下を交えての本学仏教研究者とのトークセッション
 
登壇者:
   ブータン王国・・・
       ケサン王女殿下
       ヴェツォプ・ナムギャル駐日ブータン大使(インド常駐)
       カルマ・ツェテームGHN委員会次官
 
   龍谷大学・・・
       桂 紹隆(BARCセンター長・宗教部長・文学部教授)
       鍋島直樹(CHSRセンター長・法学部教授)
       三谷真澄(コーディネーター・国際文化学部准教授・BARCユニット2研究員)
 
 
■開会の辞
 最初に若原道昭学長より,開会の挨拶があり,併せて今回の講演会開催の経緯と趣旨説明がなされた。第4代ジグメ・センゲ・ワンチュック前国王(1955-,1974戴冠)が,京都府・京都市・京都大学総合地球環境学研究所など7団体によって,第2回「KYOTO地球環境の殿堂」の1人に選ばれ,ケサン・チョデン・ワンチュック王女が,父王の名代として来日されたものである。前日の表彰式,基調講演に引き続いて,龍谷大学で講演会が実現したことが紹介された。
 
 
■講演会
 続いて,ケサン王女によって,「仏教国ブータン王国のGNH政策」について,英語同時通訳による講演が行われた。GNHは,1970年代に第4代国王によってはじめて提唱され,現在,GNH政策は,4本の柱(経済発展・環境の保護・文化の推進・良き統治)と9つの領域(精神面の幸福・人々の健康・教育・文化の多様性・地域の活力・環境の多様性と活力・時間の使い方とバランス・生活水準/所得・良き統治)を中心として,国家的な取り組みがなされていることが紹介された。
 
 
■トークセッション
 トークセッションでは,三谷真澄氏のコーディネートによって,仏教の観点からアプローチがなされた。
 
 ブータンは,チベット仏教文化圏に属し,大乗仏教を国教とする唯一の独立国であり,世界有数の「信仰密度」の高い仏教国と言ってよい。近年は,ブータンを扱うテレビ番組増え,『タイム』誌で毎年発表される「世界で最も影響力のある100人」の2006年リスト(Leaders & Revolutionaries)の中にも,第4代国王が入っている。今回,「KYOTO地球環境の殿堂」の表彰によって知名度はますます高まっている。最近,ブータン王国のGNH政策は,政治学,経済学,人類学,環境学,幸福学などさまざまな分野から注目されている。以下,登壇者よりコメントと質問がなされた。
 
 桂紹隆氏はまずブータン国王が「京都地球環境の殿堂」の表彰を受けたことに対して祝辞を述べた後,日本とブータンとを比較して次のように述べた。1945年の敗戦後,日本は戦争によって荒廃した国土の復興と国民の生活の向上を願って,我々はひたすら経済的発展を目指してきた。GNHの4本柱のうち3つの課題については,ある程度の成果を上げてきたといえる。
 
 しかし,GNHの第3の柱である「文化・伝統の保護/精神的価値の保護」に関しては,戦後日本は実質的にはなんら積極的な政策を展開してきたとは言えない。その背景には,日本国憲法で厳格な「政教分離」の原則のもとに一切の「宗教教育」が禁止されていることがあると思われる。その結果,「精神的価値」の保護の中心的役割を担うはずの「家庭」や「家族」の崩壊が,日本がいま直面しているもっとも重要な問題である。その意味で,ブータン王国のGNH政策から日本が学ぶべきことがあると確信している。
 
 さらに桂氏は次のような質問を行った。ブータン王国は仏教を国教としているということで,その「文化・伝統/精神的価値」の中心は仏教であろうと想像される。仏教王国ブータンの学校教育の現場で,伝統的な精神的価値,すなわち仏教精神を子供達に伝えるために,どのような「宗教教育」が行われているのであろうか。
 
 対して,ヴェツォプ大使,カルマGNH委員会次官により以下の回答がなされた。ブータンにおいて,仏教は国教であり,学校では,特に仏教教育ということは行っていない。それらは,幼少期から家族や地域が担うものである。政教分離を基本としているが,母語であるゾンカ語の教材や授業等で仏教に触れることはある。一方で,他者への親切,先生への尊敬といった価値観では,仏教の影響が大きい。また,朝の礼拝,ストレス解消に効果のある「冥想」の時間を全校で取り入れている。 
 経済的発展と環境保全とのバランスが重要である,それは仏教用語で言うところのmiddle path(中道)である。 
 
 以上をうけて,三谷氏は次のようにトークセッションを総括した。ブータンのGNH政策は,縁起や中道といった仏教精神が基盤にある。日本仏教は大乗仏教が主流であり,ブータン仏教も広い意味では大乗仏教に入る。経済発展は,自分や自分の家族,自分の地域,自分の国のためといった,利己的な側面が強いが,環境保全は,自分以外の他者,他の国,地球全体のことを考えなければならない。そういう意味で,利他的側面がある。大乗仏教では,自利(自らのメリット)と利他(他者へのメリット)とが一体であることを説くが,こういった点も共通ではないか。
 
 今後,伝統を重んじつつ,経済発展と環境保全の両立,立憲議会制民主主義という国家体制,仏教王国としてのアイデンティを保っていくという,今までどの国も成し遂げたことのない壮大な実験をしている国として,敬意を以て静かに見つめていきたいと思う。
 
■閉会の辞
 最後に,赤松徹真文学部長(文学部教授・BARCユニット3研究員)が,ケサン王女はじめブータン王国政府一行に謝辞を述べ,講演会全体の総括をなしつつ,今後のBARC研究プロジェクトの課題と展望を提示して終了した。

【文責】龍谷大学アジア仏教文化研究センター

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