研究活動

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2018年度 グループ2ユニットB 第1回国際学術講演会

報告題目流転輪廻の面倒さをいかに体現するか―クイア仏教の「解放の神学」を目指して―
開催日時2018年6月20日(水)16:45~18:15
場所龍谷大学大宮学舎西黌2階大会議室
報告者ビー・シェーラー(カンタベリー・クライストチャーチ大学教授,INCISE センター所長)
ファシリテーター那須英勝(龍谷大学文学部教授)
コメンテーター中平了悟(龍谷大学文学部非常勤講師)

■講師紹介・通訳:川本佳苗(京都大学東南アジア地域研究研究所連携研究員)

【報告のポイント】

 シェーラー氏は,仏教研究者でクイア理論家かつ実践家としての立場から,仏教の性認識や性差別の問題を歴史的・理論的に検討し,その上で,今後の研究や実践の可能性を論じた。

【報告の概要】

 フェミニズムは従来,男性/女性の二つの性差のあいだで生じる差別のあり方を問い直してきた。しかし近年,性を二つとする理解は乗り越えられようとしており,より多元的な性を念頭に,研究や実践が展開されるようになっている。本報告では,特に仏教のなかのセックス(生物学的性差)やジェンダー(社会的・文化的性差)に注目し,その他者理解の実態を再考した。

 古代インドにおいて,性(ジェンダー)は三つに分類されており,「パンダカ」という「第三の性」が存在した。パンダカは,娼婦や寡婦などと同様に,僧侶が交流すべきではない5つのカテゴリーの1つに指定されている。つまり,男性の性的対象と認識されていたのだ。ただし,初期仏典の記述にはパンダカに関する決定的な定義はなく,男性性に欠損がある人物,といった捉え方をするのが適当な存在であった。ところが,4~5世紀以降の文献で,パンダカの基準が5種類に分類される。その結果,その肉体的な不能性が輪廻やジャーティといった業の思想と関連付けられたり,同性愛的な性的指向に特徴づけられたりして,パンダカのもつ多様性が限定されてしまった。

 一方,初期仏教の律文献で禁じられている行為の数々に目を向けてみると,僧侶は同性愛も含め,さまざまな性行為を行っていたのがわかる。また,仏陀は性転換した人物をサンガに受け入れており,初期仏教では性転換者の出家も認められていた。さらに,輪廻の思想を突き詰めて考えれば,性転換はカルマの結果であって,確かな因果に根拠づけられていることになる。

 上記のような見解をふまえ,仏教に基づく性差からの「解放の神学」を構築しうる。仏教による性差の認識を多元化することで,仏教自体の議論も豊かにできる。今後は,多様なディシプリンの研究者や,研究者の内外での対話を進め,これをフェミニズム運動であると同時に,エイゲイジド・ブッディズムの一形態としても推進していく必要がある。

【議論の概要】

 中平氏は,LGBTの当事者にかかわる実践者としては,当事者をエンパワーすると同時に,問題をとりまく概念や権威を問い直す必要があると指摘した。その上で,輪廻や業(カルマ)に関しては,日本仏教では差別を助長するために用いられてきたところがあり,この点,よりデリケートに考えるべきではないかと問うた。これに対しシェーラー氏は,カルマは他人に投げかける概念ではなく,自己の問題であり,他者への差別につなげるのは回避すべきだと応じた。

【文責】アジア仏教文化研究センター

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