研究活動

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2018年度 グループ1ユニットA 第2回国際シンポジウム

報告題目文献学上の持律生活と現在の持律生活
開催日時2018年11月24日(土)10:00~17:00
場所龍谷大学大宮学舎東黌-302教室
参加者62人

■報告者・題目:
(第1部)パーリ律文献学からみた持律生活
佐々木 閑(花園大学 教授)「律蔵の意義と理念」
李 慈郎(東国大学校 准教授)「パーリ律から見る女性出家者の生活」
岩田 朋子(龍谷大学 龍谷ミュージアム 准教授)「律蔵に説かれる仏弟子のすがた」

(第2部)現代の僧院生活
Gyana Ratna(チッタゴン大学 准教授)「バングラデシュにおける僧侶の生活と社会 Buddhist Monk life of Bangladesh and their role in the society」
藏本 龍介(東京大学東洋文化研究所 准教授)「現代ミャンマーの僧院生活-律を生きる出家者たち-」
飯國 有佳子(大東文化大学 准教授)「ミャンマーにおける女性修行者の出家生活と律」

(第3部)討論会
司会者:蓑輪 顕量(東京大学大学院 教授)
登壇者:佐々木 閑・李 慈郎・岩田 朋子・gyana ratna・藏本 龍介・飯國 有佳子

■司会:大谷 由香(龍谷大学 特任講師)
■主催:龍谷大学世界仏教文化研究センター アジア仏教文化研究センター

【報告のポイント】
 釈尊が制定された戒律において、文献研究を主とする仏教学の研究者からの当時の様子についての報告(第1部)と、現地調査を主とする文化人類学の研究者からの現在の様子についての報告(第2部)を通して、総合的、学際的にその実態を明らかにすることを趣旨とする。

【報告の概要】
 第1部「パーリ律文献学からみた持律生活」において、3名の報告がおこなわれた。これらのなか、東国大学校の李氏は、比丘尼波羅夷「不共戒」を中心として、女性出家者の生活に見られる幾つかの特徴を確認した。何より目立つ特徴は、異性関係に対する制裁であり、「摩觸戒」「覆比丘尼重罪戒」「隨順被挙比丘違諫戒」「八事成重戒」という四つの不共戒がある。波羅夷として条文化して付け加えたということからみると、確に性的な問題で女性出家者は男性出家者より厳しい生活をしたことは間違いない。ただ、制定因縁となった事件やその結果制定された条文の内容をみると、比丘尼戒の方で問題とする行動が比丘戒のそれより一層重いのは明確なので、単なる差別とも言い難い。比丘尼サンガで事件が発生し、その行動がもつ罪としての重さを量ったら、やはり婬欲にあまりにも近い行動なので波羅夷の枠組みに入れたという仮定は成り立たないのであろうか。隨犯隨制という律制定の原則を考慮すると、このような仮定も無理ではなさそうである。
 一方、挙罪羯磨を受けてまだ復権していない比丘に隨順することを禁ずる「隨順被挙比丘違諫戒」は、やはり比丘サンガの指導を受けるという、従属的な比丘尼サンガの状況、あるいはそういう認識が反映された条文であるとみるのが妥当であろう。もしそうだとすると、八敬法からも窺えることであるが、このような立場は非常に確固たるものとして維持されていたと言えようと締め括った。
 第2部「現代の僧院生活」においても、3名の報告がおこなわれた。これらのなか、大東文化大学の飯國氏は、ミャンマーにおける現地調査に基づきながら、女性修行者の実態について紹介した。ミャンマーの国民の約9割が上座部仏教を信仰しているなか、男性の一時出家が通過儀礼化する一方で、比丘尼サンガはスリランカで11世紀頃消滅したため、女性の正式な出家は不可とされてきた。在家(優婆夷)に留まらざるを得ないが、出家・剃髪して修行生活を送る女性たちが存在する。しかし、比丘尼サンガが存在した仏陀の時代には、こうした女性が存在しなかったため、地域毎に名称が異なる。スリランカでは「ダルシルマーター」、タイでは「メーチー」、ミャンマーでは「ティーラシン(戒の保持者)」と称ぶ。教義上は在家であるが、制度上は「出家者」として扱われている。
 出家式の剃髪においては、先輩僧侶が予定者のために「コータタ・カマタン」を唱誦し、髪や産毛や爪等の32の身体構成要素には性差が無いことを示し、出家生活における性を否定を意味するのである。その後、衣を着用し、受戒・戒の確立を行う。ティーラシンは勤行や護呪経文を学んだ後、教典学習と冥想修行し、教学尼僧院の場合は3月末のパーリ検定国家試験(パーリ・パタマビャン試験・講師試験)を中心に過ごし、この他に私立試験協会が実施する試験等もあり、信奉者の獲得に関係していると締め括った。
 第3部においては、東京大学大学院の蓑輪氏の司会による討論会が行われ、「律法」としての在り方、「戒」と「律」の関係、現代の社会生活と僧侶の持律の実際等について活発な意見が交わされ、律を失った日本仏教の今後という課題も明確となった。

【文責】アジア仏教文化研究センター

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