公募研究

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真宗私塾と初期海外伝道

本研究では、真宗僧侶が主催した私塾による僧侶養成や人的ネットワークの形成が、初期海外伝道に果たした役割を明らかにする。在野の学僧の勝利に終った三業惑乱以降、中央学林に集中していた宗学の権威が地方に分散するなかで、勧学や司教らを塾頭とする各地の私塾はその数を増やした。それらの私塾のなかには、初期ハワイ開教に出向いた僧侶のほとんどを輩出した東陽円月(1818-1902)の東陽学寮のような事例もあり、私塾が初期海外伝道を支える重要な役割を担っていたことが窺える。

従来、海外伝道に関する僧侶養成をめぐっては、学林以来続く中央の宗派立学校を手がかりに研究が蓄積されてきた。しかしながら、こうした中央教育機関に関する研究成果に対して、私塾のような地方教育機関は中央の周縁的扱いのもと、ほとんど等閑視されてきたと言ってよい。1874年の小栗栖香頂の中国布教開始以来、朝鮮・シベリヤ・ハワイ・アメリカ本土・南洋など、次々と僧侶が海を渡ったが、海外伝道の黎明期を支えた先駆者たちは、いかなる環境のもとに誕生したのか。私塾への考察から真宗の国際化の基礎部分を可視化することで、中央の宗派立学校側からは見えてこない異なる一面を浮き彫りにする。

菊川一道(龍谷大学非常勤講師)

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