公募研究

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『教行信証』延書諸本の研究

本研究は、『教行信証』の現存写本のうち、特に延書本が制作・受容された意義について考察するものである。『教行信証』の書誌学的研究は、漢文本を中心に蓄積されてきた。それらは、重見一行『教行信証の研究―その成立過程の文献学的考察』(法蔵館、1981年)において、鎌倉三本(坂東本・専修寺本・西本願寺本)とその周辺の関連諸本と親鸞真蹟等の綿密な分析することにより、親鸞自筆の坂東本を中心とする諸本系統の把握のおおよそが知られることとなり、それに加えて延書本の祖本系統についても考察が試みられた。しかし、中世真宗においては、写伝・引用・註釈、「正信偈」別行など、『教行信証』をめぐる諸展開の中で、延書本は『教行信証』の本文を受容する手段として、漢文本と並ぶ地位にあったと思われるにも関わらず、その受容や展開の意義については充分に考慮されてこなかった。そこで本研究では、漢文本等、中世に他の形態と共存していた延書本の受容を知ることを目的とし、延書本その他の比較検討を行うことで、中世真宗における『教行信証』の展開を知るための一助としたい。

冨島信海(浄土真宗本願寺派総合研究所,龍谷大学非常勤講師)

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